思想

意味とシステム

意味とシステム―ルーマンをめぐる理論社会学的探究佐藤 俊樹勁草書房 2008-10-22売り上げランキング : 15623Amazonで詳しく見る by G-Tools いただきもの。ずっと前に送っていただいていたのだが、いままで紹介しなかったのは別に放っておいたわけではなくて…

良い死

良い死立岩 真也筑摩書房 2008-09売り上げランキング : 54890Amazonで詳しく見る by G-Tools この10月、共同通信のために書いた立岩真也『良い死』の短い書評を転載します。いくつかの新聞に配信されたはずですが、確認はしていません。 重度の障害や難病と…

スピノザ:「無神論者」は宗教を肯定できるか

スピノザ―「無神論者」は宗教を肯定できるか (シリーズ・哲学のエッセンス)上野 修日本放送出版協会 2006-07売り上げランキング : 190910Amazonで詳しく見る by G-Tools まえに読んだ上野修『スピノザの世界――神あるいは自然』があまりに面白かったので、今…

続・夏の読書

コミュニタリアン・マルクス―資本主義批判の方向転換青木 孝平社会評論社 2008-02売り上げランキング : 124995Amazonで詳しく見る by G-Tools 読了直後の感想は、「うーん……」というところ。『資本論』を、近年優勢にみえるリベラルな「アソシエーション」論…

夏の読書

オリンピック三昧、ながら。垂直の記憶―岩と雪の7章山野井 泰史山と溪谷社 2004-03売り上げランキング : 55188Amazonで詳しく見る by G-Tools 難峰ギャチュン・カンでの死闘の記録は圧巻。物質のような「文学」の重量感が腹に来る。ビヨンド・リスク―世界の…

環境リスク学

環境リスク学―不安の海の羅針盤中西 準子日本評論社 2004-09売り上げランキング : 29730Amazonで詳しく見る by G-Tools 2004年の刊行時にはかなり話題になった本をようやく読む。環境リスクとは何か、その意義がよくわかる入門書。 多くの評者たちが言及して…

3冊揃いました

明治学院大学社会学部による「共同プロジェクト」の宿題がやっと出揃いました。小生は第1巻の第1章と巻末の解説を書いています。いちおう、学部生のゼミのテキストとして使える感じをめざしました(少なくとも僕はそういうつもりで易しめに書いたつもり)…

資本論

資本論〈第1巻(上)〉 (マルクス・コレクション)Karl Marx 今村 仁司 鈴木 直 筑摩書房 2005-01売り上げランキング : 83701Amazonで詳しく見る by G-Tools 「大学院基礎演習」の三つ目のテキスト。冒頭の第一章「商品」と第二章「交換過程」のみ。ドイツ語原…

私の好きな曲

私の好きな曲 (ちくま文庫 よ 20-1)吉田 秀和筑摩書房 2007-12-10売り上げランキング : 9727Amazonで詳しく見る by G-Tools いつもポケットに吉田秀和を。ちくま文庫で「吉田秀和コレクション」が出たので、電車のなかで一冊ずつのんびり読んでいこうと思っ…

性と宗教

「大学院基礎演習」の二番目のテキストは、マックス・ウェーバーの名高い短編「世界宗教の経済倫理・中間考察」。ここでウェーバーは、なぜ宗教(プロテスタンティズム)だけが資本主義を生みだす原動力になったのかという例の問いを、戦争、性といった、人…

デュルケームとトクヴィル

今年は大学院の「基礎演習」という科目をもっていて、院生たちとともに社会学(およびその隣接領域)の古典・準古典をいくつか拾い読みしていく。そういうわけで、最初のテキストにえらんだのは、あまりにもオーソドックスに、これ。自殺論 (中公文庫)デュル…

精神分析における生と死

立木著によると、フロイトの「生の欲動/死の欲動」概念については、これ↓(原著は仏語)がメルクマール的な研究だということだったので、猛スピードで斜め読みしてみた。Life and Death in PsychoanalysisJean Laplanche Johns Hopkins Univ Pr 1985-03売り…

精神分析と現実界

FC2ブログは、1ヶ月更新しないと、勝手に広告がエントリーに侵入してくるんですね。知らなかった。とっくに終わっていなければならない原稿二つ、毎日呻吟しているのだが、遅々として完成せず。。。そのうちの一つは、どうしてもフロイトのなぞりに終始して…

快原理の彼岸

フロイト全集〈17〉1919‐1922―不気味なもの、快原理の彼岸、集団心理学posted with amazlet on 07.11.28須藤 訓任 藤野 寛 岩波書店 (2006/11)売り上げランキング: 145536Amazon.co.jp で詳細を見る 岩波から刊行中のフロイト全集で、久しぶりに読んだ。これ…

フョードロフ伝

とりあえず、『フョードロフ伝』の邦訳はあるようだ。ただし、新品は版元品切れ。明学の図書館にもない。うーむ。と思ったら、「本やタウン」で注文できた。

福沢諭吉の真実

福沢諭吉の真実 (文春新書)posted with amazlet on 07.11.05平山 洋 文藝春秋 (2004/08)売り上げランキング: 192142おすすめ度の平均: 『福沢諭吉の戦争論と天皇制論』も併せて読むべき 本書の「完全版」は出版されるべき 福沢諭吉のイメージが変わる!Amazo…

フリーターにとって自由とは何か

フリーターにとって「自由」とは何かposted with amazlet on 07.11.05杉田 俊介 人文書院 (2005/10)売り上げランキング: 144864Amazon.co.jp で詳細を見る 刊行から2年経ったが、いわゆる「格差」をめぐって考え、行動するために、つねに携えるべき一冊であ…

紀伊国屋で見かけた本たち

ルネ・シャールの言葉posted with amazlet on 07.10.18ルネ・シャール 西永 良成 平凡社 (2007/06)売り上げランキング: 158841Amazon.co.jp で詳細を見るマルクスの「資本論」 (名著誕生 1)posted with amazlet on 07.10.18フランシス・ウィーン 中山 元 ポ…

誕生の哲学・序説

つい先日、『〈個〉からはじめる生命論』(NHKブックス)という本を出しました。帯には何やらもの凄い惹句がたくさん書かれていますが(*´ー^`)ゞてへへ、実際の内容は、私がここ数年考えてきた(というか、考えあぐねてきた)由なし事を一般読者向けにでき…

自由とは何か

自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅 (ちくま新書 680)posted with amazlet on 07.10.08大屋 雄裕 筑摩書房 (2007/09)売り上げランキング: 34586おすすめ度の平均: 自由の意味を問い直す 問題提起の書 「自由」という言葉の定義Amazon.co.jp で詳細を見る…

講談社現代新書四題

分子生物学者が「生命とは何か」を語る。とても面白い科学エッセイなのだが、その面白さの大部分は科学史的な記述のおかげである。とりわけ、ワトソンやクリックの影でノーベル賞の栄光から捨て置かれたロザリンド・フランクリンの話には胸が痛み、かれらに…

自分であるとはどんなことか

一瞬だけ、ひと息ついているところで。 大庭健『自分であるとはどんなことか』刊行から早十年。この間のルーマン研究の進展については全然知らないけど、この本のコアはやっぱり本物だと思う。社会システムと心システムは相互に環境である、社会システムの要…

差別と権力

前からずっと気になっていた魚住昭『野中広務――差別と権力』(講談社文庫)を、近所のブックオフの100円コーナーで拾って、思わず一気読み。期待にたがわぬ面白さだった。唸らされ、考え込まされるエピソード満載だが、とりわけ野中氏が「加藤紘一の乱」を剛…

言説分析の可能性

佐藤俊樹・友枝敏雄編著『言説分析の可能性――社会学的方法の迷宮から』の最初の三つの論文を読む。昨年出版されたときにはニューヨークにいたので、すぐには読めなかったが、楽しみにしていた本。巻頭の佐藤論文が、いつもながら訥々と底意地悪く、楽しい。…

水槽の中の脳

ヒラリー・パトナム『理性・真理・歴史』の巻頭に収められている超有名論文「水槽の中の脳」を読む。この論文に言及するほかの人たちの書いたものは読んでいたが、パトナムさん自身の論文を読んだのはこれが初めて。 僕はこの話は「夢」問題と同じ種類の懐疑…

テロリズム

息切れし、頭痛に苛まれながら、『さようなら、私の本よ!』読了。作者のきわめて微細かつ重層的な叙述を暴力的に要約すれば、これは9・11以降においてテロリズムの肯定的可能性を恢復させる探索である。もちろんそんな言い方は一面的にすぎる。ここでも…

哲学の歴史、『さようなら、私の本よ!』

おとといから風邪で発熱。パソコンに向かって原稿を書こうとするが息切れがして続かず、しかし完全に寝るほど重いわけでもないので、寝ころびながら、飯田隆編『哲学の歴史11 20世紀? 科学の世紀と哲学 <論理・数学・言語>』(中央公論新社)を半分ぐらい…

越境の時――一九六〇年代と在日

その人の前に出ると居ずまいを正さずにはいられないという相手が僕にもいる。数少ないそうした人たちの一人がフランス文学者の鈴木道彦さんである。一橋大学時代、鈴木先生の授業やゼミに都合3年間も出席していたことを告白するのは、現在までのところ超低…

マインド

慌ただしく帰国してから、はや1ヶ月近く。マンハッタンに比べても新宿あたりの人混みはすさまじく、また人々の動線が入り乱れているせいもあって、3分も歩くとげんなりする。リハビリには時間がかかりそうだ。 今週は、信原幸弘編『シリーズ心の哲学? 翻訳…

宗教右翼、ノリの良い左翼

金曜日の午後は"With God On Our Soul: George Bush and the Rise of the Religious Right"というドキュメンタリーを観に行った。題名通り、ブッシュ父の登場以降、アメリカンの宗教右翼が急速に政治的影響力を持つに至る過程を追った作品で、元々は会員制公…