山原バンバン

 で、その旅の途中、那覇の古本屋で見つけて買ったマンガが、大城ゆか『山原バンバン』(ボーダーインク)。沖縄北部、山原(やんばる)地方のどこかのシマに暮らす女子高校生の、なんということもない日常をセキララに描く。絵はうまくはないが硬質のかわいらしさがあり、話は鋭すぎずユルすぎず、特にどこがいいというのは言いにくいのだが、のんびり読んで得られる充実感は心地よい。セリフが全部うちなーぐち、しかも山原地方の方言で、たいていは欄外に標準語訳は出ているものの全部ではないので、話がよくわからんところも多いが、それもまたよい。
 ぼくが手に入れたのは古本とはいえ、きれいな本で、腰巻きには「やったね、発売10周年記念!……幻のまんが家、大城ゆかは、元気です!」等々とあり、いしかわじゅん描く自画像の推薦イラストも載っている。奥付によれば、本作の初版は1994年。ぼくのは2004年に出たもの。作者による「十年目のあとがき」を読むと、もうまんがは描いていないようだ。