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引っ越し、トワイライト・ゾーン

1月26日(金)

 夜通しパトカーのサイレンが唸りを上げ、ゴミ回収車の物音が轟きわたるヘルズ・キッチンのアパートから、閑静なアッパー・ウェストサイドのアパートに引っ越して、もう十日が過ぎた。村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』を舞台化しようとしているスティーヴ氏からサブレット(又借り)したワンベッドルームの古い部屋だが、ここは本当に静かで日当たりも良い。ただ、今日みたいに零下十度!にもなる寒い日には、ちょっと暖房が力不足で、特に勉強部屋兼寝室が少々寒い。とはいえ、全体的な快適さは引っ越し前とは比べものにならない。

 テレビも大きくなったし、ようやく部屋でDVDが観られるようになった。いままではVAIOノートでしか観られなかったのだ。というわけで、まずは日本から持ってきてあった『Twilight Zone (Definitive Edition)』を晩飯ごとに1作ずつ観る。かつて中学1年生の時、金曜日の深夜1時35分からテレビでやっていた『トワイライトゾーン』(当時は『ミステリーゾーン』という邦題だったが)の強烈な印象は忘れられない。とりわけ、たぶん邦題は「人形の家」(原題はMiniature)だったと思うのだが、世間になじめない男がアンティークの小さな館の中に住む人形の女性に恋をする話は、全編に流れるモーツァルトのピアノ・ソナタイ長調とともに、心に焼き付いた。そのエピソードを今回改めて見直したら、歳をとった分なのか、昔にも増してしんと胸に染みわたるようだった。はじめて脚本家を確かめたところ、おー、チャールズ・ボーモントではないか! この人はシリーズのメイン作家の一人であるだけでなく、たぶんシリーズ中の最高傑作のいくつかも書いている小説家・脚本家で、たとえばPassage on the Lady Anneというエピソードは、たしか短編小説を脚本化したんじゃなかったっけな?(この本に入っている「淑女のための唄」がそうだと思うんだが、定かではない)。 この話を最初に知ったのは、故・星新一のエッセイでだったと思う。しかし、これも到底小中学生向きの話ではない。ネタバレをしたくないので詳しくは書かないが、感情生活に行き詰まった若い夫婦が、なんとか関係を改善しようとして旧式の豪華客船で長旅に出るのだが、なぜかその船の客はみな老人ばかりだった……というだけでも、ちょっとは雰囲気が伝わるのではないか。ひやりとした叙情が際だつ、やるせない佳作なのだ。