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セッション

 このあいだ、月曜日のセミナーが終わった後、気分転換のため、久しぶりに楽器屋に行った。Guitar Centerという、全米に展開しているチェーン店のマンハッタン支店で、ユニオン・スクエアの近くに大きな店を構えている。

 アメリカの楽器屋はどこもそうだが、そこらへんに展示してるギターを客が勝手に選んで、空いているアンプに勝手につないで、好き勝手に試奏できる。たまに通りかかった店員が「どう?」なんて声をかけてくるけど、別にもうやめろとかいうわけではない。だからいつまでも、何本でも、気になるギターをとっかえひっかえ弾ける。たいへん気軽でよろしいのだ。ただし、高額なギターは手の届きにくい高いところにぶらさがっていたりするけど。

 この日もそんな調子で、ギブソンの子分のエピフォンのセミアコを弾いていた。しばらくすると、僕のすぐ脇でギブソンのSGでブルースっぽいフレーズをを弾いていた、なかなか上手なオッサンがニコニコしながら声をかけてきて、あんたは良いパートナーだとかなんとか言って、セッションしようという。僕はそんなにうまくないのでたじろいでいると、オッサンは構わず、これは知ってるかと言いながら、クロスロードだのパープル・ヘイズだのといた定番の名曲を繰り出してくるので、もちろん知ってるよ、と適当に合わせてソロを弾いたりしているうちに、いつ果てるとも知らぬセッションが始まってしまった。ブルース・ロックの名曲や「天国への階段」なんかを、延々一時間以上。オッサンは常連客らしく、店員に挨拶なんかしていたが、こちらはさすがに良いのかな?という遠慮が出てきてしまう。しかし相手はまったく気にせず、もっとボリュームを上げろとかいう。
 しかし、いやー楽しかった。そのうち腹も減ってきたし、閉店時間も近づいてきたのでお開きにしたけど、またここで会いましょうと言いあってお別れ。それが二週間ほど前のことで、その後、研究発表の準備のために余裕がなくなってしまったので、また再会は果たせていないのが残念だ。でも、それも何とか終わったので、また出かけていってみよう。

 このギター・センターで前に見かけた心温まる光景は、父親かおじさんらしき人と一緒に来ていた高校生ぐらいの男子がハイウェイ・スターのソロをばっちり決めてみせて、褒められ、ちょっと誇らしげにしていたことだ。

 それにしても、あのオッサンとのセッションで一番ショックだったのは、自分が思った以上に弾けないことや昔は弾けた曲を思い出せないことではなく、言葉を交わしているうちに彼が「42歳」であるらしいことが判明したこと!つまり年下! いやいや、前々回の日記のコメントにも書いたけれど、こんなところで年齢を気にしていてはいかんのです。しかし、どうも知っている曲がほとんど重なっていると思った……。
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この冬唯一の大雪が降った直後のセントラル・パーク。