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言説分析の可能性

 佐藤俊樹・友枝敏雄編著『言説分析の可能性――社会学的方法の迷宮から』の最初の三つの論文を読む。昨年出版されたときにはニューヨークにいたので、すぐには読めなかったが、楽しみにしていた本。巻頭の佐藤論文が、いつもながら訥々と底意地悪く、楽しい。乱暴に要約すれば、本来の言説分析は反復不能な名人芸で、「言説分析」は目新しくない知識社会学をさも新しそうに宣伝しているだけ(だから悪いというわけではない)という話。僕も自分なりに「方法」については考えているのだが(それについて書きたい気もしないし、またその能力もないのだが)、ある意味で勇気を与えられ、ある意味でヒヤリとさせられる。その次の遠藤知巳論文は初出時に読んでいたが、その加筆版であるこれを読んで「社会の全域性」について改めて考える。根本的な主張は佐藤論文に近いが、佐藤論文のあまりの簡潔さに「?」となった人はこちらをじっくり読むとよいだろう。三つ目の北田暁大論文はキットラーのやっていることについての、いつもながら周到な解説で勉強になった。これら三つの論文はどれも、ここ十年ほどの社会学に溢れかえっている「〜の言説分析」に対する嫌みかつ建設的な批判になっていて、したがってこの本はいわゆる「言説分析」の教科書ではない。というわけで『言説分析の可能性』という書名自体が悪意に満ちている。とはいえ――残りの論文は斜め読みしかしていないが――論文の配列を逆に、後ろから前に読んでいけば教科書的にも使えるように作られているようで、そこがまたイヤミで楽しい。