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自分であるとはどんなことか


 一瞬だけ、ひと息ついているところで。
大庭健『自分であるとはどんなことか』刊行から早十年。この間のルーマン研究の進展については全然知らないけど、この本のコアはやっぱり本物だと思う。社会システムと心システムは相互に環境である、社会システムの要素は個人ではなく〈行為の共軛性〉であるというセントラル・ドグマから倫理学の必然性を力業で捻り出そうとする大庭氏の後をうろうろとついていきながら、議論をちょこっと捻って適用範囲を広げようとしているのがオレ?ということがわかった。(でもそれだけでも、主流の生命倫理への批判としては十分に価値があると思っているのだが。)近著の『善と悪――倫理学への招待』(岩波新書)ではウィギンズらを下敷きにした道徳実在論を整理していて、もはやシステム論は前面に出てこないけど、システム倫理学分析哲学の道徳実在論との〈アウフヘーベン〉を大庭氏にはぜひとも成し遂げてほしいと、まるで勝手に思ったのだった。(でも実は、その恐るべき教養全開の大庭流哲学史なんかも期待していたりする。)