不思議な少年6

第5巻では「少し息切れ気味かな?」と思ったが、第6巻はなかなかいいハナシばかり。僕は〈人間が生み出した最も強いものは何か?〉という問いに、ひとりの原始人との交わりから答える第2話が好きだ。とはいえ山下和美は微妙に変わり続けている。後期(まだ続いているが)『柳沢教授』と同じように、『不思議な少年』の最初の方は〈文句ばかり言いながら現実から眼を背け、気に入らないことは全部他人のせいにする卑小な庶民/大衆〉に対する痛罵が爽快だったが、そうした鋭角さをまったく捨てるわけではないものの、最近の『少年』は、そうした卑小さに拮抗する崇高さを〈あらかじめ選ばれた英雄〉だけでなく、〈名もなき衆生〉のなかに見出そうとすることが目立ってきた。その結果、『柳沢教授』の初期に近い生暖かさが漂いだしてきた。本巻の最後に収められた、愛すべき田舎者「ムメキク」の話がその典型だ。ハードでクールな『少年』を求める向きには、それは後退とも感じられるかもしれないけれど、僕はそれでよかったと思う。少年は人間からの影響を受けて変わったのだ。「寄生獣」でさえ、人間たるシンイチに作用を及ぼしつつ、自分もいくらかは反作用で変化したではないか。

不思議な少年 6 (6) (モーニングKC)不思議な少年 6 (6) (モーニングKC)
山下 和美

講談社 2008-02-22
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