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ザ・ビートルズ青盤

The Beatles 1967-1970The Beatles 1967-1970
ザ・ビートルズ ジョン・レノン ジョージ・ハリスン

EMIミュージック・ジャパン 1998-03-11
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 ぼくが初めて聴いたビートルズの曲は、9歳か10歳のとき、小学校の友だちの家でたまたま中学生のお兄さんがかけていた「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」で、レコードの回転数がふらつくような、なんだか妙な曲だなあと思ったのを覚えている。でもその音楽は心に残って、まもなくぼくはオーディオや電子部品を見に通っていた秋葉原石丸電気3号店の洋楽売り場で「ヘイ・ジュード」と「ヘルプ」(もしかしたら「イエスタディ」も)のシングル盤を買い、そうしてあっというまにビートルズに傾倒していったのだった。
 そのわりに、生まれて初めて買ったLPレコードはなぜかカーペンターズのベスト盤で、二枚目がビートルズの後期代表作を集めた通称『青盤』だったと思う。正確にいうと、自分で買ったのではなく、小学5年生のとき、11歳の誕生日に、所沢のレコード店で母が買ってくれたのだ(ちなみに、誕生日を祝うという習慣が薄かった我が家では、いわゆるお誕生プレゼントを買ってもらったのは、これが最初で最後だったはずである)。LP2枚組で4400円は、小学生のぼくにはほとんど神々しい宝物のように思えた。もちろん値段のせいばかりではない。そこには後期ビートルズの名曲ばかりが、これでもか!とばかりに詰め込まれていたのだ。

 久しぶりにこの『青盤』(CDだけど)を聴いたら、その切なさにほとんど引きつりそうになった。懐かしさから、だけではない。故ジョージ・ハリスンが選曲したこのアルバムは、最大公約数的な代表曲にはさまって、「ヒア・カムズ・ザ・サン」はともかく、「オールド・ブラウン・シュー」などというかなり地味なジョージの自作曲が入っていて、まあご愛敬(苦笑)という感じで受けとめていたのだが、さっき改めて真面目に聴いてみると、自分の曲を増やそうというスケベ心だけではない、もっと芯の通った編集であることが突然理解できた。その「芯」とは、ノスタルジックな切なさの感情である。どことなく退廃的な翳りのある「バック・イン・ザ・USSR」や泣き節の「ドント・レット・ミー・ダウン」が入っているのも同じ理由だったのだ。それよりなにより、一曲目に「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」、二曲目に「ペニー・レイン」という、ジョンとポールそれぞれのノスタルジー系最高傑作が並べられているという事実こそが、それを如実に物語っているではないか。
 なぜこんなことに今さら気づいたのだろう? 俺がジジイになったからか? でもジョージがこれを編集したときは、まだ二十代半ばだったはずだ。ビートルズに対する彼自身のノスタルジー、といってしまえばあまりにキレイなまとめすぎるけれども、少なくとも言えるのは、そのときジョージは寂しくて寂しくてたまらなかったはずだ、ということである。