野生の思考 大橋 保夫 みすず書房 1976-01-01 売り上げランキング : 54935 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『野生の思考』には、『親族の基本構造』のような緻密さ、スマートさはない。それは大部分が対象のちがい(親族構造と神話)から来るのだろう。感嘆するほど明晰な分析にひれ伏すしかない『親族』に比べると、『野生』以降の神話分析には、「たしかにそう読めば読めるかもしれないけど……」と言いたくなることが多いのだ。それは、以下のすぐれた入門・解説書2冊を読んでも変わらない印象である。
レヴィ=ストロース入門 (ちくま新書) 小田 亮 筑摩書房 2000-10 売り上げランキング : 3794 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
レヴィ=ストロース―構造 (現代思想の冒険者たちSelect) 渡辺 公三 講談社 2003-06 売り上げランキング : 66058 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
僕はこの本を読むまで、『親族』や『野生』その他の論文しか読んでいなかったときは、レヴィ=ストロースとは凄く頭のいい人というイメージだった。しかし『悲しき熱帯』を読んで分かったのは、この人は「もの凄く」頭のいい人であるということだった。訳者の大橋保夫氏も指摘しているように、『野生の思考』には記号論の理解として怪しい箇所も目に付くし、そもそも〈人類のたった一つの神話〉という聖杯そのものがクサい。しかしそういった過剰な点も含めてレヴィ=ストロースの思考には尽きせぬ喚起力があり、それが最も生々しいかたちで書きとめられているのが『悲しき熱帯』だと感じる。よく知られたくだり、お互いを抱き合いつつ地面に直接ころがって眠りにつくナンビクワラ族(だったよな)の人々を見て、人類の最も原初的なやさしさが云々という感慨を記す箇所をはじめ、注意を惹かれた文章に傍線を引きながら読んでいくと、たちまち本が線だらけになってしまう。そのドキドキ感のすべては、いかなる早わかり本からもすっぽり抜け落ちてしまうだろう。だから若い人たちに言いたいのは、レヴィ=ストロースの人類学に興味をもったなら、ともかくこの本から読んでみてほしい、ということだ。差異の苛酷さをみない中沢新一的な「人類学」に、たおやかに丸め込まれないためにも。
悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス) Claude L´evi‐Strauss 川田 順造 中央公論新社 2001-04 売り上げランキング : 11479 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
悲しき熱帯〈2〉 (中公クラシックス) Claude L´evi‐Strauss 川田 順造 中央公論新社 2001-05 売り上げランキング : 8339 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
親族の基本構造 クロード・レヴィ=ストロース 青弓社 2001-01 売り上げランキング : 227088 Amazonで詳しく見る by G-Tools |