今日マチ子『COCOON(コクーン)』

COCOONCOCOON
今日マチ子

秋田書店 2010-08-05
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 何年ぶりかで、ひめゆりの塔を訪れたあと、那覇の美栄橋近くにあるジュンク堂で買った。「ジュンク堂那覇店でお買い上げのみなさまへ」という著者からのメッセージチラシが入っていた。沖縄出身の担当編集者から「ひめゆりの少女をモチーフに描きませんか?」という企画を示されたときの戸惑いを率直に語っている。自分のような、戦争も沖縄も知らない「関係ない人間が描いていいのか?」と思いつつ、実際に沖縄の戦跡を取材してみると、「その生々しさに、現在もつづく痛みに刺されるような感覚」をもったこと。そして「今の少女が戦争にまきこまれたら? どうやって正気を保つだろう? そんなことを考えて描きました」という。

 ここ何年かで読んだマンガのなかで、圧倒的な最高傑作。夢想であるがゆえに、あまりにも露骨。誠実かつ率直であるがゆえに、危うく、不謹慎なまでに、死とエロスの等根源性を見事に形象化してしまった。これこそが紛れもない「少女マンガ」であることを鮮烈に示してみせる最終話の澄みわたった空気に、僕のように老いさらばえつつある読者は否応なく息をとめ、そして世界はすでに(つねに?)新しい人びとのものであることを、せめて快活に認めるほかない。そうであってほしいと、心から願わずにはいられない。