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『鈴木先生』完結

鈴木先生(11) (アクションコミックス)鈴木先生(11) (アクションコミックス)
武富 健治

双葉社 2011-04-28
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 とうとう完結してしまった。文化祭での演劇公演に向けて生徒たちのあいだに異様なテンションが張り詰めるなか、そのこととも絡む原因もあって精神的に追い詰められた卒業生が学内に侵入、小川蘇美を人質に「公開レイプ」を宣言するという大事件を起こす。その最も緊迫した場面で繰り出される小川の護身術の必殺技に大爆笑(この一大ギャグを輝かせるためだけに、あらゆる伏線はあったのか!)。しかし、もちろん今回も、その事件も含めて、全体は鈴木対生徒たち、教員間、犯人対小川、演劇部のユリアとその兄たちが繰り広げる激しいディスカッション・ドラマである。「政治家はだらしない、國民はみんな頑張っているのに」というたぐいの空疎な紋切り型が、自己免責への自覚されざる強烈な欲望ゆえにはびこる社会の空気に対抗しながら、それでも「世界は少しずつよくなっている」というメッセージを、その根拠も挙げつつ全編の締めくくりに掲げる姿勢はどこまでもストレートだ。力み返った真剣さが一線を越えてギャグへと転化する領域を、距離をとって単なるギャグとして消費するのではなく、その領域の内部というか共犯圏から、したがってあくまでも真剣さとして描き尽くすという力業を通じて、すでに空気と化したおざなりの「シリアス/ギャグ」「ベタ/非ベタ」という二分法をダツコーチクし、しかもそこにとどまらずに具体的な実践をつねに提示し続けた『鈴木先生』は、その画期的な展開をマンガにしかなしえない方法論をもって遂行したということも含めて、「マンガにはこんなこともできるのか」という驚きを与え続けてくれた。個人的には、終盤で中村があまり活躍しないのがちょっと寂しかったけど。