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BAUHAUS "Sky's gone out"

 1982、3年頃、ぼくの音楽&ファッション師匠は、小学校からの友人Nだった。小学生の頃から、先生が黒板の方を向くといきなり口笛を吹いたり、中学生のときにはなぜか自前の理科実験道具(フラスコだのアルコールランプだの)を持っていたりと、とにかくヘンな奴だったのだが、やがて案の定というか、こっちがブルース・スプリングスティーンボブ・ディランに魂を燃やしているときに、全身黒ずくめのカラスファッションに身を包み、Phewだの戸川純だのINUだのEP-4だの、海外の暗黒系ニューウェイヴだのばかりを聴くようになった。
 そのNからはいろいろなレコードを聴かされた、いや聴かせてもらったが、面白いとは思うもののあんまりピンとくるものはなかった。例外的にEP-4の『リンガ・フランカ』は気に入って、自宅でNに聴かせたとき、「へえ、こういうの嫌いだと思ってた」と言われたぐらいだ。逆に、ぼくの好きだった音楽にNが興味を示すことは少なかったが、ルースターズの『ニュールンベルクでささやいて』の45回転12インチ・シングルを聴かせたときは、珍しく興奮していた。とはいえ、モッズやスターリンのライブには一緒に行っていた。(ツバキハウスのロンドンナイトにも二人で行ったのだが、異様にケバいグラム野郎が店から出てくるのに出くわしてビビり、店に入らず帰ってきた、なんてこともあった。)
 バウハウスもNから教わった。その時点では、とにかく『スカイズ・ゴーン・アウト』や『バーニング・フロム・インサイド』のジャケットがめちゃくちゃカッコ良くて、でも中身は、つまらないとは言わないが、やはりピンとはこなかった。ただベスト盤に入っていた「ジギー・スターダスト」のカバーだけは、当時も今もデビッド・ボウイを崇拝しているぼくとしても、素直にいいなと思った。

 最近になって、とくに理由はないのだが、なんとなくまたバウハウスを聴いてみようと思って、何枚かCDを買ってみた。20歳の頃、2500円のLPを買うのは一大決心を必要としたが、いまはデラックス・エディションでも同じくらいの値段で買えてしまう。ぼくは調子にのって、上記2枚のアルバムと、昔は聴かずじまいだったファースト(『マスク』)とセカンド(『イン・ザ・フラット・フィールド』)を大人買いしてみたのである。
 そうしたら、20歳の頃にはよくわからなかった『スカイズ・ゴーン・アウト』が、もの凄くいいじゃないの! ぼくの頭の中では、マイナースケールの単調なリフが延々続くだけ、みたいなイメージが固定されていたのだが、確かに基本はそういう作りの曲が多いのだが、でもそれだけじゃない。1曲目、ブライアン・イーノのカバー「サード・アンクル」から、確信に満ちたビートが突きつけられてくる。他の曲も暗く、しかし単に暗黒なだけではない淡い色彩に満ちて美しい。
 ぼく自身が変わったということなのだろう。それにしても、Nの影響を受けて、原宿の古着屋で買った真っ黒なロングコートを着て、髪の毛に(ちょっとだけだけど)赤いメッシュを入れたりしていた時にはわからなかったバウハウスの音楽が、すっかり着るものに頓着しない、くたびれた50歳のオヤジになってこれほど染みてくるとは、人生とは異なものよ。

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Bauhaus

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 上のボーナス・トラック入り『スカイズ・ゴーン・アウト』は、やや入手困難のようだ。「ジギー・スターダスト」はこっちのベスト盤にも入っている。
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