ナーヴ・カッツェ『OyZaC』


 今日も今日とて、おウチで採点。BGMはこれ、ナーヴ・カッツェのアナログ盤だ。なぜか写真がタテに表示されてしまう(元データはちゃんとヨコになっている)ので不格好だが、どう直せばよいのかわからんのでこのままにしておく。帯にファーストアルバムとあるが、この前に12インチシングルがあったらしい。両者を合わせたCDは持っていて、20年来愛聴しているが、『OyZaC』だけを独立して、しかもLPで聴くのは初めて。レーベルに「見本盤」と書いてある。
 当時の「和製ポリス」という異名は伊達ではなく、分析的に聴けば、少なく緻密に選び抜かれた音でソリッドな空間を構築する音作り、ポップな中にもひと捻りされたメロディ、とても具体的な題材を扱っているのに(たとえば「入浴」など)夢幻的な歌詞など、『シンクロニシティ』のポリスに共通する要素が確かにある。しかし全体として生み出された音楽は圧倒的にナーヴ・カッツェだけの妖しい色彩に輝くものだ。
 1989年頃だっただろうか、たしか渋谷エッグマンで彼女たちのライヴを見たことがある。小柄な女性スリーピースバンドの、あまりに演奏のうまさにぶっ飛んだ。飯村直子さんの指がストラトのメイプル指板を走る光景を鮮明に覚えている。
 それ以降、『歓喜』(これも名盤)でメジャーデビューし、何枚かのアルバムを作ったが、ドラマーの脱退、アコースティックからさらにはテクノへとサウンド・デザインのドラスティックな変貌を経て、90年代末には活動を停止してしまったようだ。彼女たちがもっとタフに新曲を作り続け、活動し続けていたらどうだっただろうか、と時おり考える。チャットモンチーの人が、ねごとを評して、「ガールズバンドの救世主」と言っていたが、ナーヴが現在もしぶとく活動し続けていたら、もしかしたら救世主など不要だったかもしれない、と夢想する。