浅野智彦『「若者」とは誰か:アイデンティティの30年』

 

「若者」とは誰か: アイデンティティの30年 (河出ブックス 61)「若者」とは誰か: アイデンティティの30年 (河出ブックス 61)
浅野 智彦

河出書房新社 2013-08-13
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 卒論や修論(!)を書いている学生がしばしば「アイデンティティ」という言葉を使うのだが、「それはどういう意味?」と質問して、まともな答えが返ってきたためしがない。ある4年生などは、それをきっかけに、「アイデンティティ」を分析概念として振り回すのをやめ、卒論のテーマまで変えてしまった(こういう人を「地頭がいい」というのだ)。「アイデンティティ」は便利な言葉だが、当然のことながら、この言葉が便利である(と見える)という状況をも問いの対象とする、という多元的な視点がなければ、とうてい有効に使いこなすことはできない。
 本書は第1章でまさに「アイデンティティ」についてこうした二重の反省的検討を行うところから話を始めている。まずはここだけでも、「アイデンティティ」とか「文化」とか言っているゼミ生たちに読ませなくては。それ以降の本論はまだ読んでいないが、「コミュニケーション」や「オタク」をキーワードにする卒論が定常的に多発している昨今、本書全体も必読文献として推薦する機会が多くなりそうだ。(もっともワタクシは来年度はサバティカルですけどね♪)