We Shall Overcome

 ブルース・スプリングスティーンの意外な新譜、すべてピート・シーガーの曲のカヴァーという『ウィ・シャル・オーヴァーカム』は、予想をはるかに!超えて楽しい作品だった。この中で表題曲だけは1998年に企画ものアルバムでリリースされていたものだが、他の曲は今回、ブルースの農場の家にミュージシャンを集めて、せーので録音したのだという。これがとっても開放的な音楽に仕上がっていて、なんとも気分がいいのだ。
 ピート・シーガー自身のレコードとしては、僕はフォークウェズから出ているベスト盤のCDしか持っていないが、いまはもっと新しいベスト盤や、新しい「エッセンシャル」シリーズのベスト盤が出ているようだ。
 これらには、ブルースが選んだ曲はほとんど収録されていないが、これはむしろブルースがひとひねりしたからで、ザ・バーズが美しく演じた「ターン・ターン・ターン」や「リムニーのベル」も入っているし、ブルースもライヴ版には収録している「我が祖国」も、そしてもちろん「花はどこへいったの」も入っているので、本物のフォーク・ソングにしてプロテスト・ソング、そしてフォーク・ロックのルーツを聴きたい人にはぴったりなんじゃなかろうか。どちらかと訊かれたら、「Which side are you on?」という、僕の偏愛する恐ろしげな労働組合歌が入っている前者を薦めたい。ただし輸入盤なので、歌詞・対訳がないのが痛いかも。