わたしは暴力が大嫌い、であることに偽りはないのだが、切った貼ったの肉弾戦における有形力の行使にぞくぞくさせられることがあるのは否めない。人体の裸の物質性が露呈する瞬間――それをきわめて自覚的な方法論をもって(たぶん)はじめて形象化した画期的な漫画が『寄生獣』だった。この作品はまだ同時に、物質的に変わることは、もちろん「人間性」の根本的な変容でもなければならないということを示したと思う。『無限の住人』『ホーリーランド』『あずみ』といった暴力満載漫画にはそうした変容は希薄だが(『無限』はあまりに人情が濃厚で暴力そのもののリアルさがマスキングされがちだし、『ホーリーランド』は(青春ものだからいいんだけど)主人公が暴力の交歓を通じて友情を獲得していくという弁証法がきれいすぎるし、『あずみ』に至っては「怪物」たる少女あずみが「人間」へと回帰していく物語になってしまった)、どれもここまで読んできた以上、やめるわけにはいかないのである。とりわけ、マンハッタンのブックオフで1冊ずつ買って読んだ『ホーリーランド』は、しみじみと胸に染みたよ。
寄生獣―完全版 (1) 岩明 均 講談社 2003-01 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
無限の住人 22 (22) (アフタヌーンKC) 沙村 広明 講談社 2007-12-21 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ホーリーランド 16 (16) (ジェッツコミックス) 森 恒二 白泉社 2007-11-29 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
あずみ 43 (43) (ビッグコミックス) 小山 ゆう 小学館 2007-11-30 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |