昨日の朝刊で、浅倉久志さんの訃報を読んだ。日本SF文化の創世記から活躍し続けてきた、伊藤典夫さんと並ぶ偉大な翻訳家。もっともよく知られた訳業は、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だろう(これは、映画版『ブレードランナー』の方がはるかに面白いと思った)。ディックの作品はほかにも数多く訳しておられるが、僕自身が読んだときに強い印象を受けたのは『ユービック』だった。ほかには、ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』の異様に格好いい表題作も印象的だったが、ブラック・ユーモア、またスラップスティック小説を好んだ浅倉さんらしい仕事の筆頭は、R・A・ラファティ『九百人のお祖母さん』かもしれない。ヴォネガットの作品もたくさん訳しておられるが、初期の名作では、浅倉さんの訳した『タイタンの妖女』より、伊藤典夫さんが訳した『猫のゆりかご』のしっとりした悲しみの方が僕の好みだった。
ともあれ、お会いしたことはなかったが、お仕事を通じて多くのことを教えてくれた恩人に、合掌。
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