亀山訳『悪霊』1

悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー 亀山 郁夫

光文社 2010-09-09
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 第一巻(第一部)読了。とにかく読みやすい。翻訳の質については例によってかなり批判されているが、ロシア語はまったく分からず、しかも三十年近く昔、新潮文庫江川卓訳の上巻だけで挫折したオレにあれこれ言う資格はない。亀山訳はすいすい読めてしまう(というか、あまり緻密に読んでも仕方がないような気にさせる、とも言えなくはないが)。何より文字がでかいのがよい(新潮文庫の江川訳も改版で字が大きくなったようだから、あっちも読んでみるか)。
 内容は、第一部ではまだほとんど何も起こらない。わけのわからない人物たちが過剰な饒舌でもって相対峙する、謎のしゃべくり漫才が延々続くだけ。どの登場人物にも重みみたいなものがまるで感じられないのは翻訳のせいか。昔読んだときに最も印象に残った優生主義者シガリョフ氏は、ここまでのところではちらっと出てきてすぐに引っ込んでしまう。彼の演説がどう訳されているか、つづけて第2巻を通勤読書するつもり。