BLマンガ五題

 とある優秀な学生(=腐女子)から貸してもらったBLマンガ5冊について簡単なメモを。ネタバレ満載。

神様の腕の中 3 (3) (ビーボーイコミックス)神様の腕の中 3 (3) (ビーボーイコミックス)
ねこ田 米蔵

リブレ出版 2007-08-01
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 本当は第4巻を読んだのだが、まだアマゾンに表紙画像がなかったので、第3巻にリンク。「欧州一伝統あるパブリック・スクール」を舞台に、少年たちがさまざまなカップリングで絡む。第4巻では、やたらとタカビーだが内面に素直さを秘めたサーシャが親の経済的破綻のために学校をやめかけるところを、長くサーシャにいじめられてきたフォレストの僕になることで救われ……という設定で、二人が純愛を成就させるまでの物語が展開する。前半三分の一あたりでフォレストがサーシャにフェラチオを強いるので、このあとどうなることかと思うが、実はこれがほとんど唯一のセックス・シーンで、あとは少年が心を寄せ合うプロセスがなかなか丁寧に描かれるのみ。絵柄もキレイだし(オレの好みからすると、ちょっとみんな馬ヅラ過ぎるきらいはあるが)、現代の少女マンガとして楽しく読める。女は全く登場せず、ほとんど「二者関係メイン」で話が進むので「天動説やおい」とのこと。

恋愛ジャンキー (BAMBOO COMICS REIJIN Selection)恋愛ジャンキー (BAMBOO COMICS REIJIN Selection)
東城 麻美

竹書房 2001-02
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 同じタイトルで葉月京による別のシリーズものがあるが、こちらは2001年に出た1巻もの。「ハードなBL」で「リバ」(註・リバーシブル〜「攻」と「受」が入れ替わること)もありとのことで、確かにセックス・シーンはかなり多いし描写も具体的。でも基本は80年代少女マンガを受け継ぐ〈心に茨を持った少年>(モリッシー)たちの純愛というフォーマットで、それがポルノグラフィックな描写とまったく自然に両立している。これが男女間だと「本気か遊びか」と「セックスするかしないか」という二つの軸がねじれて重なってきて、ややこしいことになってしまうのだが、男同士だと性欲は所与として肯定されるので、「セックスをたくさんする」ことがイコール「カラダだけが目当て」(極端化すれば「セックスするってことは、ほんとは好きじゃないってこと」になってしまう)という疑惑の等式が成り立たない、あるいは少なくとも薄れる感じがする。そこに女性読者は開放感・解放感を覚えるのだろうか、少なくとも僕はそう感じた。それがこの作品の良さなのだが、ただ発表年が比較的古いからか、あまりにも登場人物が少なく閉塞感があること、そして少々女性嫌悪感がなくもないことは気にはなった。

さよならBaby (キャラコミックス)さよならBaby (キャラコミックス)
京山 あつき

徳間書店 2006-07-25
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 「腐男子にもわりと人気がある」といわれている作家らしい。ひょんな事情で年長の従兄のアパートに同居することになった男子中学生が、最初は反発していた相手にしだいに惹かれていき……というハナシ。片方が寝ぼけてのキスシーンはあるが、ハードな絡みはゼロ。全体に細い線、白っぽい絵柄で描かれる軽いタッチの私生活ストーリー、という趣。楽しくさらっと読めるけど、特別な感動はないかな……。でも、同級生に対する独占欲から嫉妬をあらわにする主人公に対して、同級生が大人っぽくいさめる場面など、なかなか教育的であった。この作者の作品としては、「無類の少年好き」の青年が小学校の教師となって葛藤と戦いつづける様子を描いたコメディー『仮面ティーチャー』が有名。

フェイクファー (花音コミックス)フェイクファー (花音コミックス)
やまがた さとみ

芳文社 2004-10-27
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 往年の少女マンガでいえば、くらもちふさこ紡木たくを思い起こさせる絵柄で非常になじめる。登場人物がそろってやたらと美形でファッショナブル、といってもアニメ絵風ではなく、やはり80年代テイストがある。萩尾望都大島弓子が確立した「内面の独白」手法も多用される。ハードな絡みはほとんどないし、<一見クールな関係の底に秘められた純粋で切ない思い>という究極にベタな内容からも、昔少女マンガは読んでいたけど最近はご無沙汰で、でもBLってのに興味がある、というオレと同じタイプの読者にはかなりオススメである。少年が急激に恋に落ちた相手からはじめてアナルセックスをされながら、「苦しくて/苦しくて まるで恋をしている胸のように/キモチが良かった」というキャプションがつくのは、なかなかキましたね。
 それにしても、この本に入っている短編すべてにおいて、主人公(=受)はまったく女の子でもかまわない絵で描かれている(表紙でわかると思うが)。いくら何でもどういうことなのかと作者に詰め寄りたい気持ちが湧く反面、かつて小学生のころに、山口百恵岩崎宏美と並んで、「緑色の屋根」や「アヴェ・マリア」で一世を風靡した美声の美少年「ルネ・シマール」君(知っている人は四十代以上だろう)にも夢中になった経験を持つオレとしては、その気持ちもわからなくはない、とは申し添えておこう。

僕にだって言い分がある (花音コミックス)僕にだって言い分がある (花音コミックス)
山田 ユギ

芳文社 1999-10
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 人気作家の、少し古い作品。2006年で17刷りだから、ながく読まれているようだ。田舎で育った幼なじみの少年二人が、親との葛藤などを経て成長しながら、やがてお互いへの愛を自覚する……というストーリーを、軽快なラブコメに仕立てた作品。ノリも良く、ちょっとホロッとさせて、これも楽しく読めた。しかし、それにしても、出てくる女は主人公のおばあさんとお母さん(事情があって離ればなれになっていたが再会する)のみ。家族もので、学園風景も出てこないため、そもそも登場人物が非常に少ないのが、個人的にはちょっと寂しい。オレは賑やかなマンガが好きなんで。