2005-01-01から1年間の記事一覧

スポック博士

前に読んだ短編集『停電の夜に』がため息の出る出来映えだったので、ずっと読みたかったのだがなかなか手がかりのなかったインド系超美人作家ジュンパ・ラヒリさんの長編を、ようやく読み始めた。 冒頭から、短編にもまして繊細で、容赦のない人間観察が流れ…

加藤周一『20世紀の自画像』ほか

昔から公立学校のカリキュラムや教科書を頭ごなしにけなす人たちはありふれていて、「学校英語はダメ」だとか「国語はもっと論理的な文章を」とかもっともらしい主張が倦まず繰り返されてきた(いる)のだが、その手の大雑把なクリシェってのは、たいていの…

リッキー・リー・ジョーンズのベスト・アルバム

リッキー・リー・ジョーンズの3枚組ベスト盤、duchess of coolsvilleは無敵だ。このどこまでも穏やかにセンシュアルな歌には、聴く者のあらゆる感情のくぼみにそっと分け入って、そこから少し息を呑むような思いがけない要素をさぐりあてて見せてくれる、い…

マーク・トゥエイン、不思議な少年

◆山下和美『不思議な少年』がおもしろかったので、御本家マーク・トゥエインの『不思議な少年』(中野好夫訳、岩波文庫)も読んでみた。もの凄い面白さだ。山下版とのちがいは、かの「不思議な少年」(a mysterious stranger)が明確に「堕天使」と説明され、…

野茂英雄と筑紫哲也

◆もう10年にもなるのか。野茂英雄がロサンゼルス・ドジャースに入団して新人王をとった1995年だったか、それともノーヒット・ノーランを達成した翌1996年のことだったか、正確には覚えていないのだが、安達哲が『コミックCUE』に短い作品を描いたことがあ…

BRUCE SPRINGSTEEN、ゆらゆら帝国

◆SIGHT最新号は「1975年」特集。でも表紙は『明日なき暴走』のジャケットだし、内容もスプリングスティーン関連の分量がいちばん多いから、実質的には半ばスプリングスティーン特集といってもいい。渋谷陽一氏の巻頭言もスプリングスティーンに合焦…

鏡リュウジ氏との対談と『図解雑学ジェンダー』

トップページにも書いたが、二つばかりお知らせを。◆今週末の4月2日(土)、鏡リュウジ氏(心理占星学研究家)と、朝日カルチャーセンター(新宿校)で公開講座をします。テーマは「『しあわせ』ってなに?」。近年の恋愛現象や、「しあわせ」「幸福」とい…

YOSHII LOVINSON、SHERBETS

2月のはじめにインフルエンザ(B型)にやられてしまい、一週間寝込んでから、どうも体調が良くない。喉がずっと乾いた感じで、咳もでる。たぶん気管支炎気味なのかな。そこに花粉症が加わって、いつもむずむずしている。もうこれからインフルエンザに罹る…

冬ソナ

先日、『週刊読書人』だったか『図書新聞』だったかで、一面が「冬ソナ」現象の特集で、二人の批評家(お名前は失念しました)が「左翼が冬ソナに言及するときに、侮蔑的な姿勢が目立つのが気になる」という指摘でうなずきあっていた。そうなのか。何を隠そ…

草間彌生、オノヨーコ

NHKの『英語でしゃべらナイト』で草間彌生を観た。略歴と作品の簡単な紹介の合間に、草間本人の短いインタビューがはさまる。英会話入門番組なので、当然ことばは英語だ。 これがもう凄くて、動詞はほとんど原型だけ、発音は完全なカタカナ英語、それをども…

自由意志論

D.C.Dennett, Freedom Evolvesを読了(前の読書日記であれこれ書いたときは、実はまだ最終章だけ読んでいなかったのです)。〈自由意志の有無を、私たち人間にとって意味のあるやり方で論じるには、形而上学も量子論も必要ない。人類が進化の過程で他の動物…

スピッツ『スーベニア』ほか

NECの水冷PCを買ったのだが……だーーっ、こりゃ駄目だ。 たしかにCPUファンの騒音はなく、電源ファンの音もまあ静かなのだが、とにかくHDのシーク音がガリガリバリバリとうるさい! 内部を開けて調べてみると、Seagateのバラクーダで、シリアルATA、160GBで…

『万物理論』ほか

おとといの夜、新宿の紀伊國屋書店で、『情況』に載っていた宮台真司のインタビューを立ち読み。内容は短い現状報告と決意表明で、格別の内容はなかったが、読み通すのはつらかった。僕は昔から、事柄の神経管のようなものを素早く抉り出す宮台氏の眼力と手…

ギャグマンガとお笑い、小山田大

きのうの続き。ダニエル・デネットの最新作で『ダーウィン〜』の続編ともいうべきFreedom Evolvesは、哲学史上の難問中の難問である「自由意志」の問題を、進化論のパースペクティヴから解決することに挑んだ野心的な著作である。この本を大学院の授業のテキ…

進化論の入門書

きのうの続き。ダニエル・デネットの最新作で『ダーウィン〜』の続編ともいうべきFreedom Evolvesは、哲学史上の難問中の難問である「自由意志」の問題を、進化論のパースペクティヴから解決することに挑んだ野心的な著作である。この本を大学院の授業のテキ…

ボブ・ディラン、『ダーウィンの危険な思想』、柳沢教授

2001年の『思想』に「身体を所有しない奴隷」という自己決定権論を書いて以来、もう3年以上、僕は理論的な論文を書いていない。何もしていなかったわけではなく、ちくま新書をこつこつ書いていたし、もうすぐナツメ社というところから出る予定のジェンダー…

2004年をふりかえって:The Who

昨年の最も素晴らしかった出来事。それはThe Whoのライブを体感できたことだ。もちろん正確にはピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーの二人だけの「元ザ・フー」にすぎない。けれども、真夏の横浜アリーナのステージに立ち、大音響を散乱させていたバ…