文学

『魯迅――東アジアを生きる文学』

魯迅――東アジアを生きる文学 (岩波新書)藤井 省三 岩波書店 2011-03-19売り上げランキング : 332682Amazonで詳しく見る by G-Tools 著者自身の魯迅体験から始まり、魯迅の伝記や時代背景から、日本およびアジア各国における受容のされ方の変遷まで、豊富な情…

『小松左京セレクション 2』

小松左京セレクション 2---未来 (河出文庫)小松 左京 東 浩紀 河出書房新社 2012-03-03売り上げランキング : 54539Amazonで詳しく見る by G-Tools 東浩紀による『小松左京セレクション』、第2巻のテーマは「未来」で、1964年のエッセイ「廃墟の空間文明」が…

マーク・トウェイン『ハックルベリ・フィンの冒険』(大久保博訳、トウェイン完訳コレクション)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)マーク トウェイン Mark Twain 角川書店 2004-08売り上げランキング : 71804Amazonで詳しく見る by G-Tools 『ハックルベリ・フィンの冒険』の初版は1884年だが、ヤバすぎるエピソードは削…

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (新潮文庫)チャールズ ディケンズ Charles Dickens 新潮社 1989-03売り上げランキング : 258248Amazonで詳しく見る by G-Toolsデイヴィッド・コパフィールド〈2〉 (新潮文庫)チャールズ ディケンズ Charles Dickens 新潮…

『自分の時間へ』『思想の冬の時代に』『眠る男』

自分の時間へ長田 弘 講談社 1996-06売り上げランキング : 830797Amazonで詳しく見る by G-Tools 古本屋から届いた長田弘のエッセイ集『自分の時間へ』を読んでいて、フランス文学者の海老坂武さんについて書かれた一節に出会った(「負けるが勝ちのこと」)…

亀山訳『悪霊』1

悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー 亀山 郁夫 光文社 2010-09-09売り上げランキング : 30809Amazonで詳しく見る by G-Tools 第一巻(第一部)読了。とにかく読みやすい。翻訳の質については例によってかなり批判さ…

魯迅とブレードランナー

先日、NHKの『10ミニッツ・ボックス』という教育番組で、魯迅の「故郷」を紹介していた。教科書にも載っている超有名作だというのだが、じつは僕はこの作品のことを覚えていなかった。岩波文庫の竹内好訳『阿Q正伝・狂人日記(吶喊)』は若い頃に読み、「…

英語で読み解く賢治の世界

英語で読み解く賢治の世界 (岩波ジュニア新書)Roger Pulvers 岩波書店 2008-06売り上げランキング : 163276Amazonで詳しく見る by G-Tools なかなか良書が多い岩波ジュニア新書の一冊。これもたいへん良い。「雨ニモマケズ」ほか7編の詩を英訳し、丁寧な解…

国のない男

ついでに、カート・ヴォネガット『国のない男』にもリンクしておこう。死の一年前(1996年)のオハイオ州での講演で、「ヒトラーとブッシュの唯一の違いは、ヒトラーは選挙で選ばれたってことだ」(“The only difference between Bush and Hitler,” Vonnegut …

浅倉久志さん追悼

昨日の朝刊で、浅倉久志さんの訃報を読んだ。日本SF文化の創世記から活躍し続けてきた、伊藤典夫さんと並ぶ偉大な翻訳家。もっともよく知られた訳業は、フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だろう(これは、映画版『ブレード…

自由論

朝青龍や国母選手が――絶対数はたいして多くないはずの――「匿名」にすがって他人を攻撃するしか能のない連中からのバッシングにさらされ、まあそこまでは仕方ないといえば仕方ないのだが(どんな世の中にも卑小な人間は一定割合で生息しているので)、それに…

水死

水死講談社 2009-12-15売り上げランキング : 906Amazonで詳しく見る by G-Tools 『取り替え子』以降の大江氏の作品は、あくまでもひと繋がりの長大なサーガとして読まねばならない。その山脈には急峻なピークもあれば峠もあるのだが、本作はどちらかといえば…

ヘヴン

ヘヴン講談社 2009-09-02売り上げランキング : 475Amazonで詳しく見る by G-Tools 想像をはるかに超える傑作。酷い苛めを受け続けている中学生の男の子と女の子の痛々しい交流、あるいはすれ違いを、男の子の視点から語っている。だが男の子はただ〈視点〉と…

立ち読み

思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)東 浩紀 日本放送出版協会 2009-05売り上げランキング : 2340Amazonで詳しく見る by G-Tools 新宿で安藤馨論文を立ち読み。<洗練された監視(≒アーキテクチャ的権力)の下で、むしろ自由の領域は増…

ワードマップ エスノメソドロジー

エスノメソドロジー―人びとの実践から学ぶ (ワードマップ) (ワードマップ)前田 泰樹 水川 喜文 岡田 光弘 新曜社 2007-08-03売り上げランキング : 131925Amazonで詳しく見る by G-Tools これも、かなり前にいただいたものだが、読んで紹介しようと思っている…

マイ・フレンズ

マイ・フレンズ黒柳 徹子新潮社 1986-05売り上げランキング : 800459Amazonで詳しく見る by G-Tools これは素晴らしい本だ。13人の友人たちをめぐる連作エッセイ。登場する人たちには、ユル・ブリンナーや坂本九、渥美清のように長年の交遊があった人だけで…

グラン・ヴァカンス

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)飛 浩隆早川書房 2006-09売り上げランキング : 62086Amazonで詳しく見る by G-Tools 打ち棄てられたヴァーチャル世界の住人たちの底知れない絶望と官能。とても丁寧に書き込まれた物語。けれど、どうも…

いただきもの陳列

待望久しい大著。エスノメソドロジー、会話分析の里程標の一つとなろう。でもまだ全然読めないけど。(T_T)分散する身体―エスノメソドロジー的相互行為分析の展開西阪 仰勁草書房 2008-09-12売り上げランキング : 106832Amazonで詳しく見る by G-Tools ところ…

宇宙飛行士ピルクス物語、ディファレンス・エンジン、ユリイカ

おお、ながらく入手困難で、某大先生も古本に数千円払ったというレムの『ピルクス』が文庫に!宇宙飛行士ピルクス物語(上) (ハヤカワ文庫 SF レ 1-9)John Harris 深見 弾 早川書房 2008-09-05売り上げランキング : 682Amazonで詳しく見る by G-Tools宇宙飛行…

訂正

前のエントリで『日本文壇史』の巻数をまちがえてご紹介しておりました。正しくは第8巻ではなく、第7巻です。訂正しておきます。

日本文壇史

日本文壇史〈7〉硯友社の時代終る (講談社文芸文庫)伊藤 整講談社 1995-12売り上げランキング : 319304Amazonで詳しく見る by G-Tools 何年も前から間歇的に読んでいる『日本文壇史』。資料の文章をそのまま地の文として引き写したものを切り貼りし、登場人…

孤高の人

というわけで、新田次郎の山岳小説の傑作群をどうぞ。暑さの夏に、これ以上うってつけの読書はありえまい。 集団にけっして道を譲らなかったという〈孤高の単独行者〉加藤文太郎にちょっとだけ倣って、僕も我が物顔で通路を覆い尽くす集団と相対したときには…

キャッチャー・イン・ザ・ライ

キャッチャー・イン・ザ・ライ村上 春樹 白水社 2003-04-11売り上げランキング : 13891Amazonで詳しく見る by G-Tools だいぶ前にブックオフの100円コーナーで拾っておいた村上春樹の新訳を、昨日今日でようやく読むことができた。前に読んだのはもう20…

小さき者へ、或る女

頭がいい人の文章を読むのは辛い。たとえば太宰治がそうだ。こんなに明晰で、何もかもが見えているのに、生活なんてものをしていかなくちゃならないのは、なんと理不尽な重荷だったろうと、かわいそうでたまらなくなるのだ。もちろんそんな人は滅多にいない…

しあわせの理由

きのう、1年生向けの授業でネタにしようかと思って持っていったが、結局つかわなかった表題作を、きょう電車のなかで読んだ。自分とは何かという問いを脳科学的な決定論と自由意志への信憑との葛藤から――さらにその深奥にあるのは個と進化との相克である――…

読むことは旅をすること

読むことは旅をすること―私の20世紀読書紀行長田 弘平凡社 2008-05売り上げランキング : 12518Amazonで詳しく見る by G-Tools まだ実物を見ていないのだけれど、どうやら490ページもある大著のようだ。長田弘の、たとえば『詩は友人を数える方法』の文章の佇…

DV対策講演会の直前中止に抗議する署名募集

「つくばみらい市における平川和子さんの講演会直前中止に抗議し、 改めて実施を求めます」。遅くなってしまいましたが、リンクしておきます。署名の締め切りは28日(正午)で、あまり時間がありませんが、事態の推移もリンク先にしっかりまとめられています…

in rainbows

In RainbowsRadiohead Xl 2007-12-27売り上げランキング : 56Amazonで詳しく見る by G-Tools 僕にとっては「OK・コンピューター」以来の、何度も繰り返し聴きたくなるアルバム。「KidA」以降のレディオヘッドは、どこかへ向かって動き続けていることはよくわ…

純粋有形力

わたしは暴力が大嫌い、であることに偽りはないのだが、切った貼ったの肉弾戦における有形力の行使にぞくぞくさせられることがあるのは否めない。人体の裸の物質性が露呈する瞬間――それをきわめて自覚的な方法論をもって(たぶん)はじめて形象化した画期的…

カラマーゾフ続編

「カラマーゾフの兄弟」続編を空想する (光文社新書 319)posted with amazlet on 07.11.07亀山 郁夫 光文社 (2007/09)売り上げランキング: 10571Amazon.co.jp で詳細を見る ものすごく面白かった。 『カラマーゾフの兄弟』を読んだとき、「どう考えたって、…