文学

ソラリスの陽のもとに

ソラリス (スタニスワフ・レム コレクション)posted with amazlet on 07.10.12スタニスワフ レム Stanislaw Lem 沼野 充義 国書刊行会 (2004/09)売り上げランキング: 135144Amazon.co.jp で詳細を見る 『〈個〉からはじめる生命論』の執筆が佳境に入り、アタ…

ただのおしゃべり

これも前から気になっていた、絲山秋子氏の『沖で待つ』と『イッツ・オンリー・トーク』をようやく読んだら、なにかが普通のと違うマッサージを全身に受けたような感じがして、とても気持ちよくなった。細かく書きたいことがいろいろあるが、それはまたいず…

タンノイのエジンバラ

長嶋有の『猛スピードで母は』が面白かったので、『タンノイのエジンバラ』(文春文庫)という短編集も読んでみた。これも良い。表題作では、『猛スピード』所収の二作品とは違って、語り手が男なので少々戸惑ったけど、話に入り込めばとりたてて違いはなか…

猛スピードで母は

近所のブックオフの105円コーナーで拾った長嶋有『猛スピードで母は』を読む。これは……良いですよ。ほんと。僕は小説については饒舌系の、すべてを説明しきってやるという感じの文章が好きなのだけど(まあ自分もわりとそういう資質だし)、逆に削ぎ落とし系…

シガリョフ

高校生のときだったか、大学に入ってからだったか、よく覚えていないのだけれど、ともかく若い頃に読んだドストエフスキーの『悪霊』のなかでいちばん印象に残っている登場人物は、かなり最初のほうに登場するシガリョフという男だ。 とは言っても、焼き付い…

〈私〉の感情?――グレッグ・イーガンとテッド・チャン

今日の午後は某社から出す共著の論集(社会学の教科書)のための研究会に出席。少人数の研究会とか読書会というやつにはとんとご無沙汰なので、ちょっと新鮮な気持ちになれてよかった。浅野智彦さんの感情社会学に関する示唆的な報告の冒頭にP・K・ディック…

『孤高の人』と『岳』、山の本

大学一年生の冬、11月の終わりに登った谷川岳は、青く晴れ渡った空を映し出してか、蒼白の雪と氷に覆われていた。あるいは水気を多く含んでゆるんだ雪が蒼く見えたのかもしれない。山稜から一の倉沢を覗き込むと、蒼白い岸壁が一気に漆黒の影へと落ち込んで…

若き数学者のアメリカ

ゆるゆると部数を伸ばし、ついにあの『バカの壁』をも超える最短期間で200万部に達したという藤原正彦の『国家の品格』はあんまり読みたい気がしないが、同じ著者の『若き数学者のアメリカ』は大好きな本だ。1970年代のアメリカ合州国における若き藤原正彦の…

スポック博士

前に読んだ短編集『停電の夜に』がため息の出る出来映えだったので、ずっと読みたかったのだがなかなか手がかりのなかったインド系超美人作家ジュンパ・ラヒリさんの長編を、ようやく読み始めた。 冒頭から、短編にもまして繊細で、容赦のない人間観察が流れ…