思想

吉川浩満『理不尽な進化――遺伝子と運のあいだ』

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ吉川 浩満 朝日出版社 2014-10-25売り上げランキング : 1300Amazonで詳しく見る by G-Tools 読んでためになるだけでなく、何というか、心が洗われるような本だった。 本書のはじめの方で明かされるモチーフは、専門的な科学…

佐藤卓己『ヒューマニティーズ 歴史学』

歴史学 (ヒューマニティーズ)佐藤 卓己 岩波書店 2009-05-26売り上げランキング : 207981Amazonで詳しく見る by G-Tools 2009年刊。小著で自分史風の叙述も多いので、中身の薄い本になりそうな気がするが、そんなことはなく、学ぶことが多かった。 以下は200…

辻村みよ子『ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法』『人権をめぐる十五講』

ポジティヴ・アクション――「法による平等」の技法 (岩波新書)辻村 みよ子 岩波書店 2011-09-22売り上げランキング : 340743Amazonで詳しく見る by G-Tools人権をめぐる十五講――現代の難問に挑む (岩波現代全書)辻村 みよ子 岩波書店 2013-11-20売り上げラン…

重田園江『社会契約論』ちくま新書

社会契約論: ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ (ちくま新書 1039)重田 園江 筑摩書房 2013-11-05売り上げランキング : 647Amazonで詳しく見る by G-Tools 著者渾身の「著者近影」もさることながら、学生さんが描かれたという「美内すずえ風似顔絵」も同…

『ルー・リード詩集 ニューヨーク・ストーリー』

世界中の、たぶん何千人かの人たちと同じように、ここ二週間はずっとルー・リードとヴェルヴェット・アンダーグラウンドばかり聴いていた。僕が生のルー・リードを観たのは、2003年の来日公演のとき、一回きり。ドラムレスの変則編成で、いくつかの曲ではル…

柳澤健『1985年のクラッシュ・ギャルズ』

1985年のクラッシュ・ギャルズ柳澤 健 文藝春秋 2011-09-13売り上げランキング : 77807Amazonで詳しく見る by G-Tools 以前から気になってはいたのだが、合場本の書評を書くのをきっかけに、ようやく読んだ。予想を超える抜群の面白さ。今年読んだ本の中…

ましこ・ひでのり『愛と執着の社会学―ペット・家畜・えづけ、そして生徒・愛人・夫婦』

愛と執着の社会学―ペット・家畜・えづけ、そして生徒・愛人・夫婦ましこ ひでのり 三元社 2013-09売り上げランキング : 108503Amazonで詳しく見る by G-Tools 本日仕事場で手に取り、1章だけぱらぱらと。マーヴィン・ハリスって、「多くの人類学者、とりわけ…

平岡章夫『多極競合的人権理論の可能性:「自己決定権」批判の理論として』

多極競合的人権理論の可能性―「自己決定権」批判の理論として平岡 章夫 成文堂 2013-06売り上げランキング : 934683Amazonで詳しく見る by G-Tools 国会図書館に勤めながら早稲田で本書の元になる博士論文を書いた著者とは面識はないが、本書中で拙論を取り…

小松美彦『生権力の歴史』

生権力の歴史―脳死・尊厳死・人間の尊厳をめぐって小松 美彦 青土社 2012-11売り上げランキング : 308155Amazonで詳しく見る by G-Tools 既発表の論文3つに加筆修正し、書き下ろしの章2つを併せて一書としたもの。まだ熟読はしていないが、ざっと眺めたと…

天田城介・櫻井悟史・角崎洋平『体制の歴史――時代の線を引き直す』

体制の歴史―時代の線を引きなおす天田 城介 櫻井 悟史 角崎 洋平 洛北出版 2013-06売り上げランキング : 542383Amazonで詳しく見る by G-Tools 天田さんから。たくさん本をいただいておりますが、ご本人にはまだお会いしたことがありません。恐縮です。

M・フーコー『主体の解釈学』

ミシェル・フーコー講義集成〈11〉主体の解釈学 (コレージュ・ド・フランス講義1981-82)ミシェル・フーコー 廣瀬 浩司 原 和之 Michel Foucault 筑摩書房 2004-01-20売り上げランキング : 395065Amazonで詳しく見る by G-Tools あれこれ考えたが、今年はこれ…

『小松左京セレクション 2』

小松左京セレクション 2---未来 (河出文庫)小松 左京 東 浩紀 河出書房新社 2012-03-03売り上げランキング : 54539Amazonで詳しく見る by G-Tools 東浩紀による『小松左京セレクション』、第2巻のテーマは「未来」で、1964年のエッセイ「廃墟の空間文明」が…

『自分の時間へ』『思想の冬の時代に』『眠る男』

自分の時間へ長田 弘 講談社 1996-06売り上げランキング : 830797Amazonで詳しく見る by G-Tools 古本屋から届いた長田弘のエッセイ集『自分の時間へ』を読んでいて、フランス文学者の海老坂武さんについて書かれた一節に出会った(「負けるが勝ちのこと」)…

中井久夫、ウォーコップ

中井久夫の文庫本(『「思春期を考える」ことについて』ちくま学芸文庫)をぱらぱらめくっていたら、「生の哲学」系の謎の哲学者・ウォーコップの話が出ていた。 ウォーコップWauchopeというイギリスの哲学者は、アフリカで教師をしたり、港湾作業員をしたり…

坂部恵『ヨーロッパ精神史入門――カロリング・ルネサンスの残光』、坂口ふみ『〈個〉の誕生――キリスト教教理をつくった人びと』

ヨーロッパ精神史入門―カロリング・ルネサンスの残光坂部 恵 岩波書店 1997-05-16売り上げランキング : 362162Amazonで詳しく見る by G-Tools 『ヨーロッパ精神史入門』は、読み進めるにつれて高まる興奮を抑えられないほどの含蓄にあふれた本だった。ただし…

『功利主義と分析哲学―経験論哲学入門』

功利主義と分析哲学―経験論哲学入門 (放送大学教材)一ノ瀬 正樹 放送大学教育振興会 2010-03売り上げランキング : 203236Amazonで詳しく見る by G-Tools 詳しい内容は、放送大学のシラバスで。 「経験的=empirical」という概念を、カント以降の「感覚」や「…

最近いただいたいろいろな本

ありがとうございます。真理・言語・歴史 (現代哲学への招待Great Works)ドナルド・デイヴィドソン 柏端 達也 春秋社 2010-12売り上げランキング : 6559Amazonで詳しく見る by G-Tools殺すこと/殺されることへの感度―二〇〇九年からみる日本社会のゆくえ石原…

人はどのようにして兵となるのか

下の『生――生存・生き方・生命』の編者を引き受けた瞬間から、彦坂諦氏の文章を巻頭に置くことに(執筆の打診もしないうちに勝手に)決めていた。はじめて読んだ彦坂氏の著作は『男性神話』で、これもたいへん面白く、影響も受けたが、決定的に魂に杭を打ち…

自由への問い

最近出た本です。アマゾンだと「作者」となっていますが、正しくは「責任編集」者です(シリーズ全体の編者は齋藤純一氏)。でも、一章分の駄文を寄せてますので、ふつうにいえば「編著者」。生――生存・生き方・生命 (自由への問い)加藤 秀一 岩波書店 2010-…

中世哲学への招待

中世哲学への招待―「ヨーロッパ的思考」のはじまりを知るために (平凡社新書)平凡社 2000-12売り上げランキング : 290729Amazonで詳しく見る by G-Tools めちゃくちゃ面白かった。題名は『中世哲学』と大きく謳っているが、中身は「このもの性」または「個体…

高群逸枝の夢

『解放教育』という雑誌に「ジェンダー論の練習問題」というコラムを連載していた。いつのまにか4年半ほどに及んだが、思うところあって、先日終了させていただいた。 これはあくまでも『解放教育』読者を念頭において――といってもまったくの推測でしかなか…

科学と価値

科学と価値―相対主義と実在論を論駁する (双書現代哲学)小草 泰 勁草書房 2009-12-19売り上げランキング : 88052Amazonで詳しく見る by G-Tools 合理主義者にして反実在論を擁護する、科学哲学の大物ラリー・ラウダンの主著。届いてすぐ、とりあえず訳者のひ…

分類思考の世界

分類思考の世界 (講談社現代新書)講談社 2009-09-17売り上げランキング : 9417Amazonで詳しく見る by G-Tools こいつはとびきり愉しい(←ちょっとオヤジ臭い表現ですが)快著。分類学や生物学一般に興味のある人はもちろん、そうでなくても「分類」という現…

動物学からの倫理学入門

動物からの倫理学入門名古屋大学出版会 2008-10-30売り上げランキング : 160940Amazonで詳しく見る by G-Tools 動物解放論を主軸とする倫理学入門書。著者ならではのざっくばらんかつ正確な文体で、倫理学のほぼ全分野を網羅的に解説している。背景知識なし…

ダーウィンの奴隷解放思想

ダーウィンが信じた道―進化論に隠されたメッセージ矢野 真千子 日本放送出版協会 2009-06売り上げランキング : 76613Amazonで詳しく見る by G-Tools チャールズ・ダーウィンが進化理論を練り上げていったその生涯においてどれほど反奴隷制への情熱に突き動か…

最底辺の10億人、生政治の誕生

ポール・コリアー『最底辺の10億人:最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?』(中谷和男訳、日経BP)に出てくる「オランダ病」の話が印象深い。ある国に天然資源が見つかり、輸出されるようになると、為替レートにおける時刻の通貨価値が高騰…

獄中からの手紙

獄中からの手紙 (岩波文庫)ローザ・ルクセンブルク岩波書店 1982-01売り上げランキング : 199584Amazonで詳しく見る by G-Tools アマゾンでは品切れになっていたけど、新宿西口に新しく出来たブックファーストの棚で見つけた(アマゾンでも、いま見たら在庫…

大学院基礎演習終了

最終的に、今年度のラインアップは以下の通り。もちろん全部読んだわけではなく、せいぜい2、3章ずつさわただけですが。自殺論 (中公文庫)デュルケーム中央公論社 1985-09売り上げランキング : 46465Amazonで詳しく見る by G-Tools宗教社会学論選大塚 久雄…

トットチャンネル

昨年末に入院して、ちょっと腹を切った。幸い経過は良好で、入院したのも6日間だけ。そして退院後にのんびりと正月を過ごしながら、本年初めて読んだ本がコレ。トットチャンネル (新潮文庫)黒柳 徹子新潮社 1987-03売り上げランキング : 6727Amazonで詳しく…

野生の思考、悲しき熱帯

野生の思考大橋 保夫 みすず書房 1976-01-01売り上げランキング : 54935Amazonで詳しく見る by G-Tools 明学の大学院にはM1対象の「基礎演習」という授業があり、今年は春秋とも僕が担当している。基本的には古典、準古典の著作をかいつまんで輪読するとい…