日本文壇史〈7〉硯友社の時代終る (講談社文芸文庫) 伊藤 整 講談社 1995-12 売り上げランキング : 319304 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
何年も前から間歇的に読んでいる『日本文壇史』。資料の文章をそのまま地の文として引き写したものを切り貼りし、登場人物の行動や考えを描写する、伊藤整の奇妙な文体もすっかり癖になってしまい、しばらく読まないとどうにも気になってくる。今度はずいぶん長い(2年ばかりの)間をおいて、第7巻「硯友社の時代終わる」を読了した。
この巻は、対象としている時代(日露戦争前夜)そのものの特質だろう、ここまでの六つの巻に比べてもひときわ濃厚な一冊で、とりわけ胸に迫るのは斎藤緑雨の死の場面だ。よく言われるように、そもそも明治の文学者たちというのは、現代の基準で言えばほとんどがえらく若死にしているのだが、「寸鉄釘を穿つ」タイプの批評家・緑雨のように、才能はありながら圧倒的な名作を遺したわけでもなく、当時も今も「知る人ぞ知る」的ポジションにとどまっている――それだって実はたいへんなことであるわけだが――人の、いかにも中途半端な死に様というのは、何ともいえずやるせない。しかもそれが、才気煥発な毒舌と皮肉を弄する一方で、貧乏のせいで究極の夭折をした樋口一葉の晩年(!)に交わり、一葉の死後に草稿が出版されるよう尽力した優しい人の、三十代後半の死であるならば。
明治・大正の文人たちの人となりをもっと手軽に――とはいえ、なかなかの含蓄をもって――イメージするには、斎藤なずなの漫画『千年の夢』をどうぞ。斎藤緑雨が登場する樋口一葉の話は下巻に収められている。
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