スピッツ『スーベニア』ほか

 NECの水冷PCを買ったのだが……だーーっ、こりゃ駄目だ。 たしかにCPUファンの騒音はなく、電源ファンの音もまあ静かなのだが、とにかくHDのシーク音がガリガリバリバリとうるさい! 内部を開けて調べてみると、Seagateのバラクーダで、シリアルATA、160GBで7200rpmのやつ。IDEの時代のバラクーダは静音性に定評があって、僕も使いつづけているが、回転音・シーク音共に極小である。いったいこの違いは何なのか。ネットでざっと情報収集してみたところ、シリアルATAのHDはどうも軒並みうるさいみたいだ。これもやはり静音性で定評のあったMaxtorの最新モデルも酷いらしい(これは雑誌のレビューでも指摘されていた)。
 NECさん、「静音」を最大のセールスポイントにしているPCがこれでは、ちょっと手抜き、とはいわないまでも、いささか無神経ではないでしょうか。5インチベイに空きがないので、Smartdrive等で封じ込めることもできないのだ。少なくとも僕のようにひたすら静けさを求めてこのマシンを手に入れた人の多くが失望したはずだ。仕方がない、バラクーダの旧タイプを買って、IDEとS-ATAの変換アダプタを付けて、HDを換装するか。面倒くさいし、余計な出費だが。

 スピッツの新譜『スーベニア』は、これまで気づかないでいた目の前の霧が晴れていくような傑作だった。ちょっと長すぎて最後のほうがダレる感じもなくはないが、ほぼすべての曲が良く、とりわけシングルの「正夢」は久々の超名曲だ。素晴らしいポップソングに共通の、具体的にどの曲にそっくりというわけでもないのに、ずっと昔からあった曲としか思えない、たまらない郷愁に充ち満ちたメロディー。歌詞も素晴らしい。〈浅いプールで じゃれるような〉、〈ずっと まともじゃないって わかってる〉。草野マサムネの変態性が全開の、〈別れた恋人への未練〉ソングだと言えよう。他の曲も負けず劣らず素晴らしく、たとえば1曲目の「春の歌」の冒頭から、いきなり〈重い足でぬかるむ道を来た/トゲのある藪をかき分けてきた/食べられそうなすべてを食べた〉である。初期の誰にもマネのできないままにふわふわ浮いている名曲たち、「ひばりのこころ」や「夏の魔物」「魔女旅に出る」のあの信じられないようなみずみずしさ、そして〈君がこのナイフを握りしめるイメージを/毎日毎日浮かべながら過ごしてるよ〉とか、〈僕のペニスケースは、他人のとはちょっと違うけど、そんなことはもういいのさ〉などとわけのわからない妄想を吐き散らしていたあの草野マサムネが帰ってきた、しかしせっかく掴んだ売れ線J-POPとしての高い商品性はまったく損なわないかたちに見事に昇華して。
 音づくりの面では、ギター中心に、厚すぎず薄すぎず、拡がりすぎず縮こまりすぎずのウェルメイドな音場を構築していて、近年の数枚に比べると、ちょっと引っかかりがなさすぎる気もするが、その代わり何度でも繰り返して聴ける。プロデューサー亀田誠次の手腕・貢献については、現在発売中の『サウンド・アンド・レコーディング・マガジン』2月号のインタビューで詳しく語られている。