自由とは何か

自由とは何か―監視社会と「個人」の消滅 (ちくま新書 680)
大屋 雄裕
筑摩書房 (2007/09)
売り上げランキング: 34586
おすすめ度の平均: 4.0
5 自由の意味を問い直す
4 問題提起の書
3 「自由」という言葉の定義
 まだ全部読み終わっていないが、法思想的・社会学的自由論としてたいへん目配りの利いた良書(形而上学的な自由意志論とか、メタ心理学的な話はなし)。とりあえず「現代世界の〈自由〉について考えるためには、どういう問題を無視してはいけないか」を教えてくれる。あえて難癖をつければ、あまりにも親切すぎて、なんだか著者が読者に代わって勉強をしてくれているという感じがする本ではある。そういう本ってたまにあるけど、確かに便利で自分もその恩恵にあやかりつつ、うーんどうも引っかかるものもあるのだが。
 それはともかく、この本の著者もくりかえし指摘している現代社会における〈自由〉の本質的な問題とは、ハナ・アーレント『全体主義の起源』におけるホッブズ論の次のようなキメ台詞に言い尽くされているだろう。
 「国家の存在理由は、潜在的殺人者の社会に生きる個人の安全への要求である。」(邦訳第2巻、31ページ)ますます、そして、あまりにもリアルなホッブズ、そしてアーレント