続・夏の読書

コミュニタリアン・マルクス―資本主義批判の方向転換コミュニタリアン・マルクス―資本主義批判の方向転換
青木 孝平

社会評論社 2008-02
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 読了直後の感想は、「うーん……」というところ。『資本論』を、近年優勢にみえるリベラルな「アソシエーション」論としてではなく、「コミュニタリアン」として読むという試みで、なぜ単にコミュニタリアニズムを論じるだけではなくあえてマルクスにつなげるのかというと、〈労働力の自己所有=商品化〉という事態そのものの幻想性を、したがってそこから生じる〈自己・主体・人権〉といった諸観念の源基性を解体したのが他ならぬマルクスだったから。

 しかし僕には、宇野理論やレヴィナスまで引っ張り出して著者が畳みかける「関係主義」の尊重というべきテーゼのありがたみがよくわからなかった。巻末に収録された新田滋との対論でも、現代日本コミュニタリアニズムを持ちこんだ場合それが「単なる保守的復古思想」に出してしまう危険を指摘する新田に対して正面から答えず、「コミュニタリアン的価値観」を繰り返し称揚するだけである。
 ただし、青木氏の論そのものは一貫してはいる。青木氏は、「個人のヴォランタリーな連合という社会契約的人間観」を前提としたアソシエーショニズムと、「社会関係による負荷性を第一次的前提とした存在被拘束的な人間観を基礎にしている」コミュニタリアニズムとを「止揚」したり「一体的」に理解することなど不可能であり、いずれかの選択しかないと明言しているからである。そうかもしれないが、そのあたりはまだよくわからない。さしあたり備忘録としていま僕が書きとめておけるのは、第一に、青木氏が本書で描く範囲のコミュニタリアニズムなるものは僕にとって社会構想としての魅力に欠けているということ、第二に、根底的に「存在被拘束的な人間観」を前提として人間―社会を理解することと、そのような人間がいかなる関係性をつくりうるかを構想するかは、水準の異なる問題であるだろうという見通しである。いうまでもなく人間は、無数の他者たちとの関係性の中で主体化される。そして、そのようなものとして、あたかもそこからすべての自由が発するかのように振る舞い、そのことを通じて、これまでとは別の関係性を築くことができる、はずである。


 なんとなく読み返してみて、いろいろな意味で被っている深甚な影響を再確認せざるを得なかった本。

気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)気流の鳴る音―交響するコミューン (ちくま学芸文庫)
真木 悠介

筑摩書房 2003-03
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 上に書いたようなことも、結局真木悠介見田宗介のいう<根を持つことと翼を持つこと>という「弁証法」の擦り切れた変奏に過ぎないのかもしれない。
 あとこれも。
宮沢賢治―存在の祭りの中へ (岩波現代文庫―文芸)宮沢賢治―存在の祭りの中へ (岩波現代文庫―文芸)
見田 宗介

岩波書店 2001-06
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 ただ僕は、見田=真木さんのすべての本に深く宿る一種異様な〈邪悪さ〉の正体を、いまだに掴みかねている。
 3年生のゼミ合宿のテキスト。
エロス論集 (ちくま学芸文庫)エロス論集 (ちくま学芸文庫)
Sigmund Freud 中山 元

筑摩書房 1997-05
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 オマケ。題名のあまりのキャッチーさに目が眩み、5秒後に気がついたら(スタパ斎藤風に)購入していた本。なかなか眼を見開かされることがたくさん書いてある。

40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書 726)40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書 726)
有吉 与志恵

筑摩書房 2008-06
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 そして、去りゆく夏を惜しみながら。五十嵐大介はどんどん大きく、クールになっている。

海獣の子供 3 (3) (IKKI COMIX)海獣の子供 3 (3) (IKKI COMIX)
五十嵐 大介

小学館 2008-07-30
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