戦場でワルツを
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ところで僕は映画館というものが好きではなく、とくに話題作で混雑が予想される映画のロードショーには滅多に行かない。最近では『アバター』を観るために仕方なく(映画館でないと3Dで観られないので)出かけていったぐらいだ。名画座の類も、設備が古いままで長時間座れない椅子をそのままにしていたり、座席間に段差がなくて前席の客の後頭部ばっかり見せられるようなところにはまず行かない。子どもの頃、『ジョーズ』だったかを観ている最中、後ろの席の男が僕の席に足をずっとかけていた。映画を観ているあいだじゅう、子供の僕は頭のすぐ上に置かれたその男の汚らしい靴とずっと戦わねばならなかったわけだ。大学生の時、あの途方もなく切ない名作『エル・スール』を国立の名画座で見終わった瞬間、「いつ面白くなるのかと思ってたら終わっちゃった〜」と、自分の愚かさを誇示したいのだとしか思えない馬鹿でかい声で叫ぶ若い女がいた。その映画館では似たようなことが何度かあって、何か劣悪な人種をひきつける要素がそこにあったのだろうか。
そういう経験を重ねる度に、僕は、そういうモノになりたくないという思いを強めてきたし、今に至るも持ちつづけている。そういうモノの多数集まるような場所にはなるべく行きたくないなという思いも年々強まっている。映画館とは、少年の僕にとって、「大人」あるいは「一般市民」というモノの愚劣さを学んだ場所の一つだったのだ。
さてそういう点からみると、きょう行った下高井戸シネマは、とても良い映画館だった。上映中に携帯のライトを点けるなと、ちゃんとアナウンスするのもよい(そもそも全ての映画館は携帯の電波を遮断する設備とすべきなのだが)。火曜日は終日1000円だし(ただし作品ごとの入れ替え制)、これから何度も通うことになりそうだ。