Vandermassen『ダーウィンなんか怖くない』

 Griet Vandermassen, Who's Afraid of Charles Darwin?: Dabating Feminism and Evolutionary Theory, Rowman & Littlefield (2005)は、タイトルからして僕の最近の関心にどんずばりだったので読んだのだが、あまり新しい発見はなかった。Margo Wilsonが序文を書いているし、裏表紙にはHelena CloninSara Hrdyという進化論関係の大物著述家たち、あとちょっと意外な感じもするがポスモダン身体理論のElizabeth Groszという錚々たるメンバーの推薦文があったので期待したのだが、悪くはないけど、それほどの本でもなかったかな。強いて言えば、Hilary RoseとかDonna HawawayとかAnne Fausto-SterlingとかSandra Hardingといったフェミニスト科学論者の議論の単純さを批判している箇所から学ぶものはあったけど、ヴァンダーマッセンさん自身の議論も哲学的にそれほど緻密というわけではない。進化生物学そのものの説明は、著者が生物学者ではないので仕方がないのだが、専門家の議論を要領よくまとめて解説しているだけだし、それだったら長谷川眞理子さんの『クジャクの雄はなぜ美しい?』とか『進化と人間行動』とか、また進化論物はたくさん邦訳があるので、それらを読めば済む。でも全体としては、これまでに類書はなかったのだから、それで十分存在価値のある本だと言うべきかもしれない。著者はまだ若手のホープみたいだし。

 ちなみに、著者とたくさんの著名な進化生物学者たちのポートレイトが、こちらで見られます。