市川春子『25時のバカンス』

25時のバカンス　市川春子作品集（2） (アフタヌーンKC)
市川春子

講談社 2011-09-23
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る by G-Tools

　前著『虫と歌』は「なかなか良いけど、そこまでじゃないかな」という印象だったけど、新しい短編集『25時のバカンス』にはやられた。さすがの昆虫も、海の生き物にはかなわない、というか。何のことかわからない人は本作を読んでください。12歳歳の離れた弟に罪悪感と密かな恋心を抱くアラサーの姉（天才的な海洋生物学者らしい）が新種の貝を食べたところ、そこに宿っていたバクテリアに体内を食い尽くされて全身が人間形の貝殻に変化してしまい、しかし人格というか自我というかは維持したまま、研究所の同僚たちも絡んで……という説明では、この作品の変態ぶりは伝えられないことはわかっている。こうの史代『この世界の片隅に』以来、久しぶりにぐっとくる（エロティックな意味で）まんがだった。