2007-01-01から1年間の記事一覧

タンノイのエジンバラ

長嶋有の『猛スピードで母は』が面白かったので、『タンノイのエジンバラ』(文春文庫)という短編集も読んでみた。これも良い。表題作では、『猛スピード』所収の二作品とは違って、語り手が男なので少々戸惑ったけど、話に入り込めばとりたてて違いはなか…

カズ

三浦知良が自民党の出馬要請を蹴った。ああ、これでひと安心だ。万が一、前向きに検討でもし出したら、「後生だからやめてくれ」というメールとFAXをじゃんじゃん送ろうかと思っていたところでした。

猛スピードで母は

近所のブックオフの105円コーナーで拾った長嶋有『猛スピードで母は』を読む。これは……良いですよ。ほんと。僕は小説については饒舌系の、すべてを説明しきってやるという感じの文章が好きなのだけど(まあ自分もわりとそういう資質だし)、逆に削ぎ落とし系…

テロリズム

息切れし、頭痛に苛まれながら、『さようなら、私の本よ!』読了。作者のきわめて微細かつ重層的な叙述を暴力的に要約すれば、これは9・11以降においてテロリズムの肯定的可能性を恢復させる探索である。もちろんそんな言い方は一面的にすぎる。ここでも…

哲学の歴史、『さようなら、私の本よ!』

おとといから風邪で発熱。パソコンに向かって原稿を書こうとするが息切れがして続かず、しかし完全に寝るほど重いわけでもないので、寝ころびながら、飯田隆編『哲学の歴史11 20世紀? 科学の世紀と哲学 <論理・数学・言語>』(中央公論新社)を半分ぐらい…

越境の時――一九六〇年代と在日

その人の前に出ると居ずまいを正さずにはいられないという相手が僕にもいる。数少ないそうした人たちの一人がフランス文学者の鈴木道彦さんである。一橋大学時代、鈴木先生の授業やゼミに都合3年間も出席していたことを告白するのは、現在までのところ超低…

Real Force

最近買ったものの中で最大のアタリは、東プレのPC用キーボードRealforce91U。キーボードにこだわる人たちには今さら言うまでもない定評ある機種だが、評判にたがわぬ上質な品物だ。キータッチの重さ、クリック感、打鍵時に指に伝わる剛性感、すべてが実に的…

英語を書く

NY滞在中の収穫の一つは、英語を書く愉しさが少しだけわかってきたこと。機会をつかまえて報告するつもりの草稿を日本で準備してはあったのだけれど、最終的にはあちらで滞在中に一から書き直したものを、2月に小さな研究会で発表させてもらった。そこに至る…

最高に凄い音楽

昨年の秋、Amazonで大江慎也!の新譜『The Greatest Music』を試聴して、これはただならぬことが起きていると感じ、東京の自宅に届くように注文しておいた。それをようやく聴くことができたのは昨日の電車の中。そして予感は当たっていた。同じ時に中古で思…

マインド

慌ただしく帰国してから、はや1ヶ月近く。マンハッタンに比べても新宿あたりの人混みはすさまじく、また人々の動線が入り乱れているせいもあって、3分も歩くとげんなりする。リハビリには時間がかかりそうだ。 今週は、信原幸弘編『シリーズ心の哲学? 翻訳…

MOMAで想う

帰国間近の金曜日の夕刻、例によって何度目かのMOMAにタダで入る。常設店ではいつもパウル・クレーの部屋で長い時間を過ごす。キリコの絵の呪縛力はいつも圧倒的だ。セザンヌの絵もたくさんあるが、メルロ=ポンティが『知覚の現象学』の序文で現象学の…

シガリョフ

高校生のときだったか、大学に入ってからだったか、よく覚えていないのだけれど、ともかく若い頃に読んだドストエフスキーの『悪霊』のなかでいちばん印象に残っている登場人物は、かなり最初のほうに登場するシガリョフという男だ。 とは言っても、焼き付い…

思案中

ちなみに、4月からの大学院の演習のテキストとして考えているのは、こんなところ。ほんとはもう決めてなきゃいけないのだが……。 Kaushik Sunder Rajan, Biocapital:The Constitution of Postgenomic Life Nikolas Rose, The Politics of Life Itself: Biomed…

医療人類学2題

月曜日はRayna Rapp先生の最後のセミナー。といっても、僕がNY滞在中に出られる最後、というだけなんだけど。 リーディングスは以下の2冊プラス、HIV/AIDS問題のエキスパートがゲストで来るので、その人の論文。 Global Pharmaceuticals: Ethics, Markets, …

同級生?

言っていること(トシなんか気にすんな!)とやっていることが全然食い違うわけだが、ちょっと思い立って、自分と同じ年か、一年前後の範囲内に生まれた有名人をリストアップしてみた。真島昌利、甲本ヒロト、岡崎京子、松本人志、浜田雅功、アクセル・ロー…

宗教右翼、ノリの良い左翼

金曜日の午後は"With God On Our Soul: George Bush and the Rise of the Religious Right"というドキュメンタリーを観に行った。題名通り、ブッシュ父の登場以降、アメリカンの宗教右翼が急速に政治的影響力を持つに至る過程を追った作品で、元々は会員制公…

セッション

このあいだ、月曜日のセミナーが終わった後、気分転換のため、久しぶりに楽器屋に行った。Guitar Centerという、全米に展開しているチェーン店のマンハッタン支店で、ユニオン・スクエアの近くに大きな店を構えている。 アメリカの楽器屋はどこもそうだが、…

Arctically cold

ここ一週間ほどのマンハッタンは寒い。寒いなんてもんじゃない。暑い。ということはないが、最高気温が氷点下の日が続いていて、昨日の朝なんか今期最低気温の華氏10度(摂氏-12.8度)だった。今日も昼間でも-5度ぐらいまでしか上がらなかっけど、もはやこれ…

くるり

池袋パルコに向かって右手、ガード下のほうにちょっと入ったところのファッション・ビルの最上階には石橋楽器、その下にはタワーレコードがあって、院生時代、池袋駅から有楽町線で埼玉方面に一駅出たところの要町に住んでいた頃は、毎日のように通っていた…

アメリカン・ビューティ、金魚屋古書店、愛のアランフェス

昨日はRapp教授のセミナーで疲れたのに、夜、ブロックバスターから届いていた『アメリカン・ビューティ』(面白い! しかし身につまされる……)を観てしまったので寝るのが遅くなり、当然今朝も遅起き。クリーニング屋に行ったり、必需品であるオレンジ・ジュ…

ピアノ・レッスン

そうだ、引っ越して最初に観た映画は、このあいだヴァージン・メガストアの安売りカゴで見つけた『ピアノ・レッスン』(原題は"Piano")だった。僕がこよなく偏愛する(変な日本語?)、手が切れるように鋭く美しく、そしてむせかえるような愛欲の夢物語。何…

『バベル』と『ビフォア・ザ・レイン』

しかし部屋に籠もってばかりいてはいけないと思い、先日、久しぶりに映画館に行って話題のBABELを観た。ひと月ばかり前にもユニオン・スクエアの映画館に観に出かけたのだが、上映開始の30分も前に行ったのに、もうチケットが売り切れだったのだ。今回はアパ…

引っ越し、トワイライト・ゾーン

1月26日(金) 夜通しパトカーのサイレンが唸りを上げ、ゴミ回収車の物音が轟きわたるヘルズ・キッチンのアパートから、閑静なアッパー・ウェストサイドのアパートに引っ越して、もう十日が過ぎた。村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』を舞台化しようとしてい…