2006-01-01から1年間の記事一覧

Michael Moore plays Bob Dylan's songs

ボブ・ディランの曲はシンプルで原始的だ。カバー・バージョンは多いが、その粗野な力の核心を真につかみとった演奏は少ない。何しろディラン本人さえもが、演奏する度に理想のバージョンを探しあぐねて手を焼いているのだ。 ジャズの分野では、古くはキース…

『世界日報』を10日間無料でお試しできます……

……というチラシが郵便受けに入っていた(笑)。裏を見ると、読者の声として、「産経新聞、正論と同様に快く思っている」、「世界日報は(……)中立な立場での記事が掲載されているので安心できます」等々のご意見が書いてあり、爆笑。でも、今なら10日間お試し…

あっかんべェ一休

Mと「禅の考案と私的言語」的な話をしていたら、久しぶりに坂口尚の名作『あっかんべェ一休』(上・下、講談社漫画文庫)が無性に読みたくなり、押し入れの奥の段ボール箱から引っ張り出して、ついついイッキ読みしてしまった。ちょっと文字が多すぎて、文…

英語リスニングのお医者さん

アマゾンで評判が良かったので、西蔭浩子『英語リスニングのお医者さん』(ジャパンタイムズ)を買ってみた。まだPart1の「リスニング・チェックアップ」しかやってないけど、ジャパンタイムズの本らしく、中身は詰まっているし、手応えも十分。でも、著者が…

西岸良平のSF

「コスモゾーン」は『三丁目の夕日 夕焼けの詩』第20巻の巻末に収録されている独立性の高い短編である。――時は2385年。人類は宇宙空間に巨大な未来都市「コスモゾーン」を築き上げていたが、果てるともない人口増によって、相変わらず都市は過密状態であった…

安穏族

研究室の整理をしていたら、石坂啓『安穏族』を発見して、ありがちなことだが延々熟読、そして号泣。若き石坂啓、なんという才能だったことか。紛れもなくこれは、あのふわふわ、ぶよぶよした1980年代というひ弱な時代の最良の部分だった。ここではじめて女…

西岸良平

西岸良平の世界では、世界はいとも簡単に終わる。たとえば初期の「地球最後の日」は――以下ネタバレあり、ご注意を――藤子・F・不二雄の名作「ひとりぼっちの宇宙戦争」と同じ設定なのだが、藤子のほうでは人知れぬ少年の闘いによって人類が救われるのに対し…

五十嵐大介

『リトル・フォレスト』しか読んでいない人にとって、五十嵐大介とは、「スローライフ」(第2巻のオビにそう銘打ってある)あるいは「ロハス」(オエッ!)を先取りしたまんが家というイメージの範囲に収まっているかもしれないし、あるいはそんな流行語で…

職員会議での採決禁止 「校長の決定権拘束」 都教委通知

ついにここまで来たか……。今度のファシズムは、東京都の教育行政から着実に勢力拡大中というわけだ。 で、職員会議の意見を聞かない(聞いてはいけない)学校の独裁者となった人たちの一人は、こんなことを言っているそうだ。 「都立小石川中等教育学校の遠…

『ホテル・ルワンダ』、神崎繁『フーコー』

『ホテル・ルワンダ』を観た。レイトショーは今週の金曜日(14日)までで、それ以降はモーニングショーだけになってしまうので、昨日の夜、あわてて観に行ったのだ。 内容は圧倒的だった。ルワンダ内戦の惨劇を描くドキュメンタリーを基調に、主人公をめぐる…

レナード・コーエン、ジェフ・バックリー

雨が近づいてきた一日。ずっと家の中にいて、『The Essential Leonard Cohen』をBGMに流しながら、原稿の直しをする。モントリオール生まれ、コロンビア大学卒の作家、女たらしの詩人、シンガー・ソング・ライター、禅の修行者。レナード・コーエンの歌はど…

英語漬け

1年ぐらい前に買った『英語漬け』(プラト)をぼちぼちやってますが、これはいいですね。単語の選択基準にはいまいち納得できない感もあるけど、例文を聞き取ってキーボードで入力するという単純なレッスンを、PCから離れずに、気分転換がてら、すきなだ…

スピッツのシングル集

Spitz Complete Single Collectionと銘打たれた『CYCLE HIT 1991-1997』と『CYCLE HIT 1997-2005』(どちらも初回限定版はボーナス・ディスク付き)を通して聴いていると、改めて<時間>という経験の不可思議さに目眩がしそうになる。最初のシングル「ヒバ…

イチロー、松井、王、張本、金田

世の中、というか少なくともネットの世界で、自分以外の議論に対するアイロニカルな梯子はずしが蔓延しているのは、北田暁大の快著『嗤う日本の「ナショナリズム」』(NHKブックス)が見事に記述・分析した通りだ。言うまでもなくそれはしょーもない知的退廃…

山原バンバン

で、その旅の途中、那覇の古本屋で見つけて買ったマンガが、大城ゆか『山原バンバン』(ボーダーインク)。沖縄北部、山原(やんばる)地方のどこかのシマに暮らす女子高校生の、なんということもない日常をセキララに描く。絵はうまくはないが硬質のかわい…

沖縄観光

下の写真は、先月、二度目の沖縄旅行に行ったときのもの。本島北部のやんばるの森にある玉辻山(ヤマといっても標高289mだけど)に登っている途中、激しいスコールに遭遇して、やむなく撤退した。そのとき、山道にぎょーさんうろちょろしていたのが一枚目の…

アナーキズム

このあいだ、近所のブック・オフで買って読んだ浅羽通明『アナーキズム』(ちくま新書)はなかなか面白かったし、知らない人物誌もたくさん書かれていてお得だった。とりわけ印象的だったのは次の2点。ひとつは、松本零士のアナーキズム思想を『キャプテン…

ウルトラマン・マックス

『ウルトラマン・マックス』が終わってしまい、寂しい。元祖『ウルトラマン』の出演者たちや怪獣たちが再登場したり、実相寺昭雄の監督作品は『盗まれない街』だったり、子どもたちだけでなくお父さん世代にもアピールどころではなく、どう考えても40代が…

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

メキシコから不法入国してきた親友メルキアデス・エストラーダを国境警備員に(事故とはいえ)射殺されたテキサスのカウボーイ、ピート・パーキンズは、犯人の国境警備員マイク・ノートンを拉致し、すでに埋葬されていたメルキアデスの遺体を掘り起こさせ、…

マルクスの使いみち

四十を超えてからじわじわと老眼っぽくなってきて、電車の中で本を持つ手が日に日に顔から遠ざかる。混んだ車内で本を顔にくっつけるようにして広げるという芸当はもうできない。 そんな苦難とたたかいながら読んだ本書『マルクスの使いみち』(稲葉振一郎・…

空間の謎・時間の謎

内井惣七『空間の謎・時間の謎:宇宙の始まりに迫る物理学と哲学』(中公新書)を読了。ライプニッツ/マッハ路線の関係主義によって時空を再構成するという壮大なテーマを新書で一気に駆け抜ける。これはかなりキツかった。ぼくはブルーバックス・レベルの…

縷縷日記

NHKテレビのドイツ語講座をたまに観ている。昨年度と今年度のナターシャ先生もよいのだが(別に「メガネっ娘」萌えというわけではない)、いまでも時折思い出して胸がきゅんとするのは2003年度の講座だ。ベルリンのアパートをシェアしている何人かのドイ…

Brian Eno

このところ、ブライアン・イーノばかり聴いている。若い音楽ファンにとってはイーノなんてすでに歴史上の人物、あるいはせいぜいU2のプロデュースで名前を見たことがあるという程度の存在かもしれないが、骨の芯まで染みるポップが聴きたいなら、ぜひソロ作…

三笠書房とフランス書院

この両者は実は同じ出版社なんですね。正確に言うと、後者が前者の子会社だそうですが。いや別にいいのですが。

プロテストソングの変遷

昨日は家の近所でピーター・バラカン氏による「プロテストソングの変遷」という講座があったので出かけていった。狭い部屋に50人以上、ざっくばらんな雰囲気で正味2時間、曲は途中でfade out(これは仕方がない)ながら約20曲、聴いたことのなかった曲もあ…

『象られた力』、「形象の力」

飛浩隆『象られた力』(早川書房)を読む。新しめのSFを読むのは久しぶり。これはなかなかの力業、特に表題作はきわめて丹念に仕組まれた奇想だ。さすがSF大賞受賞作。最近の日本SFはこれくらいのレベルの作品がけっこうあるのかな? それならまた読ん…

『愛なんていらねえよ、夏』

しばらく前に買って、なかなかまとめて観る時間がないので、ちびちびと小出しに観ていたDVDの『愛なんていらねえよ、夏』(主演・広末涼子、渡部篤郎)を、ようやく観終わった。 素晴らしい傑作だ、これは。TV放映当時(2002年7月〜)の視聴率は平均7.7%、…

『二十世紀の法思想』

中山竜一『二十世紀の法思想』(岩波書店)を読む。「岩波テキストブックス」という、「有斐閣アルマ」の1・5倍という感じの教科書シリーズの一冊で、内容は題名通り。 これが、いやもう滅法面白い。教科書(と銘打っているだけでなく、内容や書き方も実際…

『哲学者の誕生』『ラッセルのパラドックス』

最近、なかなか一冊の本を通読することがない。目前に締め切りが迫ったささやかな原稿たちに少しでもインスピレーションを加えようと、ベンヤミン『パサージュ論』(岩波書店)の邦訳全5巻を本棚から引っ張り出して拾い読みしたり(しかしやはり<自分も動…

吉井和哉at武道館

武道館の吉井和哉は元気だった。前回のライブのしみじみした雰囲気も良かったが、今度はもう「普通」の状態。声も歌もうまくなっていたし、ぴょんぴょん跳ねていた。そして新しいシングル曲「BEAUTIFUL」の美しさ。<君の横顔は/beautiful>のところでは思わ…